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【インドネシア】カカオ生産、資本主義で変革=ダリケー[社会](2021/02/08)

世界第3位のカカオ豆生産国、インドネシアのスラウェシ島で生産農家の所得向上に取り組みつつ、日本で高級チョコレートの製造・販売を手掛けるDari K(ダリケー、京都市)の吉野慶一社長は4日、国際機関日本アセアンセンター主催のウェビナーで講演。産地の豆の品質向上には、単に高値で買い取るのではなく、資本主義の原理を活用し、生産者が自ら付加価値を生み出そうとする仕組みを作ることが重要だと強調した。

スラウェシ島のカカオ農園を訪れた吉野氏=16年10月(本人提供)

スラウェシ島のカカオ農園を訪れた吉野氏=16年10月(本人提供)

吉野社長によると、チョコレートの原料となるカカオ豆は、投機も絡んだ国際先物市場での相場が価格を決定している。生産農家が豆の品質を高めても、価格が上がるとは限らない。ダリケーは高品質の豆を選別して国際価格より高く買い取ることで、農家に努力を促す環境を整備した。

カカオだけでなく、マンゴーやバナナなど多品種を混植するアグリフォレストリーを導入し、農家の収入源の多角化や安定を図った。混植する植物の果実や葉は、カカオ豆の付加価値を高めるための発酵にも使用される。

ダリケーが手掛ける「フルーツ発酵」のカカオ豆は、パリでの国際的なチョコレート品評会クラブ・デ・クロクール・ドゥ・ショコラ(C.C.C.)で、2015年から4年連続、銅賞を獲得。吉野社長によると、同社の契約カカオ農家は約500軒で、非契約農家と比べてカカオ豆の買い取り価格は20%、生産性は50%増加。収入は80%増を達成しているという。

■供給網を一貫掌握、生産者と消費者つなぐ

同社は、サプライチェーンを一貫して掌握することで、生産者と消費者をつなぐことも実現。日本の消費者が生産地の村を訪ねるツアーも行っている。

消費者の顔が見えるようになって、農家は殺虫剤の使用をやめるなど、環境への負荷も少なくなった。アジアからカカオ豆を輸入することで、世界最大のカカオ豆産地である西アフリカからの輸入に比べ、輸送時の二酸化炭素排出量の削減にも貢献している。

新型コロナウイルスの流行で、ダリケーの売り上げは80%減少したが、契約農家の収入を守るため、カカオ豆の買い取りは継続している。併せて、顧客からの商品の注文数に応じて医療従事者に支援のチョコレートを贈る「ペイフォワード」プロジェクトを実施。過剰在庫を解消しつつ、7万人以上にチョコを届けている。

現在は、これまで数十時間かかっていたカカオ豆の磨砕プロセスを短縮化し、ひきたてのカカオマスが楽しめる機械を開発中。吉野社長は、インドネシアにチョコレート工場を設立し、地産地消を目指す考えも明らかにした。

日本アセアンセンターによると、ウェビナーは305人が聴講した。

<プロフィル>

吉野慶一(よしの・けいいち) 1981年生まれ。栃木県出身。慶應義塾大、京都大大学院、オックスフォード大大学院卒。モルガン・スタンレーで金融アナリストとして勤務。2011年にカカオ豆の輸入・卸売り、チョコレートの製造・販売を行うダリケーを創業、16年にインドネシアに現地子会社を設立。現在は従業員20人、京都などに直営3店舗を運営。資本金2億1,000万円。

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