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【香港】入境者隔離、21日間に延長[社会](2020/12/28)

香港政府は25日から、中国本土とマカオ、台湾以外の国・地域から入境した全ての人の隔離期間を、これまでの14日間から21日間に延長した。英国などで感染力の強い新型コロナウイルスの変異種の感染が拡大し、香港の空港検疫でも検出されたことを受け、水際での防疫を強化するためだ。一方、住民のクラスター(感染者集団)が確認された新界地区・沙田の公営団地では、地域を封鎖しての強制検査が実施された。

クリスマス当日、一部の商業施設などは家族連れなどでにぎわっていた=25日午後8時過ぎ、九龍地区・尖沙咀(NNA撮影)

クリスマス当日、一部の商業施設などは家族連れなどでにぎわっていた=25日午後8時過ぎ、九龍地区・尖沙咀(NNA撮影)

政府報道官は隔離期間の延長について、従来の隔離期間中のウイルス検査では陰性だったものの、隔離終了後に発症する人が一部いると見られることや、世界的な感染状況の変化を理由に挙げた。

変異種が香港で最初に確認されたのは23日。留学先の英国から香港に帰還した10代の2人の少年から見つかった。24日時点で1人は公立病院で治療を受けているが、もう1人は退院したという。

衛生署衛生防護センター(CHP)伝染病処の張竹君主任は変異種の確認について「想定内」としながらも、「香港域内での感染状況を予想するのは難しい」と述べた。同センターは26日、英国からの流入症例のうちさらにもう1人からも変異種のウイルスが検出されたと香港大学から報告があったと公表。患者はホテルでの隔離期間中の20日に発熱し、病院に搬送されたという。27日までで累計3人となった。

呼吸器専門医の梁子超氏は香港経済日報に対し、「変異種は早ければ11月の半ばには英国ロンドンでまん延していた」と分析。先月半ばから現在までに英国から香港に戻った感染者のうち1%程度が変異種に感染していたと指摘し、香港でも感染が広がっている可能性を示唆した。

■南アからの入境も禁止

政府はまた、新たに新型コロナの変異種が確認された南アフリカに関しても、搭乗日までの21日間に2時間以上滞在歴のある人は、英国と同様に香港への入境を禁止した。張氏は24日、「南アフリカから香港への直行便はなく、今のところ報告はない」としながらも、「誰がどの国を経由して香港に来た患者か分からない」と率直に語り、引き続きウイルスの遺伝子解析が必要と説明した。

26日付香港経済日報(電子版)によると、伝染病処の欧家栄首席医師は同日夕の記者会見で、香港で南アの変異種ウイルスは見つかっていないが、「今後流入症例として確認される可能性を排除しない」と話した。

■強制検査で初の封鎖、混乱も

政府は感染経路が分からない域内感染事例に減少の兆しが見られないことから、クラスターが発生した特定業種の従事者や特定地域への強制検査を強化している。

25日付信報などによると、24日早朝には沙田の公営団地「乙明邨」に2時間以上滞在した人を対象に強制検査実施に関する公告を発表。同団地を封鎖し、再検査の対象で、指定の期間に検査を受けなかった市民に対し、玄関の外に設けた臨時検査場で検査を実施した。午前6時から開始し、政府職員が対応に当たった。検査証明を発行されなければ解放されなかった。

住宅周辺は警察が警備に当たり、オレンジ色のテープで封鎖され、物々しい雰囲気が漂ったという。午後6時までに住民計390人が検査を受けた。午前には、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官も自ら現場を視察した。同紙などによると、検査を1週間前に受けたのに政府から証明の通知を受け取っていないと一部住民が当局の不手際を批判し、混乱があったようだ。

政府は11月22日に初の強制検査を実施後、既に50カ所以上に適用。再検査が必要と判断した場合は、さらに強制力を持たせるとしていた。ただ、今回は未受診の住民に罰金5,000HKドル(約6万7,000円)を科すことなく、口頭警告にとどめたという。

■「緩み」に警鐘

新型コロナの感染「第4波」が収束を見せない中、クリスマスを挟んだ連休中、多くの市民が商業施設などに出掛け、郊外や離島も人であふれた。NNA編集部員が25日午後8時ごろ、九龍地区・尖沙咀の商業施設やプロムナードを訪れたところ、多くの市民が写真を撮ったり、散歩したりする姿が見られた。香港島・中環(セントラル)などでは外国人家政婦らへの注意喚起や、飲食街の蘭桂坊(ランカイフォン)周辺で巡回する警察や政府職員の様子も目に留まった。

27日の官営メディアRTHKによると、香港大学の袁国勇教授(微生物学科)は、ここ最近、感染者数は減ってはいるが、冬至からクリスマス連休にかけて、街中で人が多くなったと指摘。感染者数の減少ペースが鈍くなっているのは、政府によるソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つ措置に対する市民の支持が下がっていることが背景にあると危機感を示した。追跡作業効率が低下すれば、「感染者ゼロ」の達成も遅れると語った。

香港では現在、複数の病院で院内感染が確認されるなど、医療現場は厳しい状況にある。九龍地区・観塘にある公立病院、基督聯合医院(ユナイテッド・クリスチャン・ホスピタル)では26日までに小規模なクラスターが発生。患者と医療従事者計19人の感染が判明した。袁氏によると、初の医療従事者同士のクラスターが起きているという。

公立病院を管轄する医院管理局(HA)によると、域内の救急病院内科病棟17カ所のうち、病床使用率が27日時点で100%を超えたのが9カ所、90%以上を含めると15カ所となり、より逼迫(ひっぱく)した状況となっている。

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