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【カンボジア】コロナで生活困窮、「1カ月以上収入ない」[社会](2020/04/27)

新型コロナウイルスの感染拡大への不安が高まるカンボジアで、低所得者が多いとされる屋台で食品などを販売する業者が収入減による生活苦に直面している。外出自粛の動きが広がり、店に足を運ぶ客が減少しているからだ。主要産業の観光業や縫製業で休職者や失業者が増え、市民の財布のひもが固いことも背景にある。こうした中、1カ月以上も収入がゼロという屋台業者さえ存在する。クメール・タイムズ(電子版)が23日伝えた。

カンボジアでは、新型コロナの影響でインフォーマルセクターの人々の暮らしが困窮している=2019年撮影(カンボジア総合研究所の鈴木博氏提供)

カンボジアでは、新型コロナの影響でインフォーマルセクターの人々の暮らしが困窮している=2019年撮影(カンボジア総合研究所の鈴木博氏提供)

首都プノンペンの市場で野菜や果物を売るフォー・リー・チャニーさん(53)は、このところ商品がほとんど売れないと話す。新型コロナへの感染を恐れ、人々が外出を自粛しているためだ。実家のある村に帰りたくとも交通費すらない。自分と夫、幼い孫2人の生活を支えるため、しゃく熱の暑さの中、売れない商品の前に座って1日を過ごすという。

屋台を営むエイ・ケアさん(53)は、「収入が途絶えてからもう1カ月以上がたつ。あとどれくらい耐えられるのか分からない」と話す。貯蓄はほぼなく、一家は少量の野菜と米で食いつないでいる。同業のロム・セン・アンさん(60)も「状況は絶望的だ」と不安を口にする。

カンボジアでは1人にとどまっていた感染者数が3月に入って急増。政府は、外国人の入国やクメール正月中の移動を制限するなどの措置を講じた。対策が奏功したとみられ、感染者数は今月12日時点に累計で122人目(うち再感染1人)を記録して以降、25日まで13日連続で増えておらず、状況は改善に向かっているとされる。

一方、政府は今後感染が拡大した場合を想定し、非常事態宣言の発動に向けた法整備を進めている。宣言が発令された場合、移動などの制限が一層強化される見通しで、経済に与える影響が懸念されている。

政府は現在、休業を余儀なくされた縫製業や観光業などの労働者に対し、月額最大70米ドル(約7,500円)を支給する補償制度を実施。縫製業については、政府が最大40米ドル、雇用主が最大30米ドルを負担する。一方、休業補償制度の対象にならない屋台業者など国家の統計や記録に含まれないインフォーマルセクターに対しては、給付金支給などの制度は整備されておらず、支援が行き届いていない。

新型コロナの発生は、好調な経済成長が続いていたカンボジアで広がる貧富の差を浮き彫りにしたとの見方も出ている。低所得者が日銭で生活している一方で、中高所得層の間ではスーパーマーケットなどで食料品を買いだめする動きが見られたからだ。

フォー・リー・チャニーさんは、「金持ちはいいだろう。だけど、その日暮らしの私のような人々はそうはいかない。食料を買いだめする動きがある一方、私は今晩、そしてこれからも家族を食べさせていけるのかということを考えなければならない」と話した。

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