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【ベトナム】日本の地球観測衛星で契約、初の海外輸出へ[IT](2019/10/21)

住友商事は18日、ベトナム国家宇宙センター(VNSC、旧・ベトナム国家衛星センター)と、地球観測衛星の調達・打ち上げに関する契約を結んだ。事業費は200億円で、円借款で賄われる。2023年の打ち上げを予定しており、日本開発の地球観測衛星で、ベトナムが海外初の取引先となる。

NEC製の地球観測衛星打ち上げで、住商とVNSCが契約を交わした=18日、ハノイ

NEC製の地球観測衛星打ち上げで、住商とVNSCが契約を交わした=18日、ハノイ

住商がとりまとめ、NEC製の高性能小型レーダー衛星「LOTUSat(ロータスサット)―1」(質量・570キログラム)を打ち上げる。日本で昨年1月に打ち上げられた「ASNARO(アスナロ)―2」をベースとしたもので、合成開口レーダー(SAR)を搭載。自然災害や気候変動への対策、農業などに役立てる。

同事業は、日本の政府開発援助(ODA)で打ち上げられる人工衛星としても海外初の事例となる。国際協力機構(JICA)は11年、ロータスサットの打ち上げ計画向けに、「衛星情報の活用による災害・気候変動対策事業」として、ベトナム政府と72億円の借款契約を締結していた。

関係者によると、プロジェクトの進行に応じ、順次追加で借款契約を結んでいく予定だ。ロータスサットは計2基を打ち上げる構想で、事業総額は500億円。住商が受注した今回の事業以外では、打ち上げ施設の建設や人材育成、「ロータスサット―2」の打ち上げなどが予定される。

日本は、より商業的な通信衛星では輸出実績があるが、公共性が強い地球観測衛星の打ち上げは今回が初めてとなる。ベトナムは、フランス政府の支援で13年に小型光学地球観測衛星「VNREDSat―1a」を打ち上げて運用しているものの、軌道上寿命が間もなく終了する見込みだ。

■経済に寄与、技術移転も

梅田邦夫・駐ベトナム大使は「ロータスサット―1の打ち上げは、ベトナム経済に必ず役に立つ」と話した。11年3月に東日本大震災が発生したころ、同案件が日本でも話し合われており、経済産業省からは「日本全体での支援」を強調する声が出ていた。梅田大使が現職として赴任した際、まだ実現しておらず、2年前にはまとまる直前で再調整となり、紆余(うよ)曲折を経て契約に至ったという。

ベトナムは、日本と組んで宇宙産業を振興させようとしている。11年にVNSCを設立し、13年には同センターと東京大学、IHIエアロスペース(東京都江東区)が共同開発した技術実証のための超小型衛星「ピコドラゴン」(1キロ)の打ち上げを成功させた。今年1月には、日越協力で50キロ級の「マイクロドラゴン」打ち上げにこぎ着けていた。

ベトナムはまだ衛星開発や打ち上げのノウハウが足りず、ロータスサット―1を搭載したロケットの打ち上げも日本で実施となる予定だ。ただ、技術移転を望む声は高く、日本側からも、ベトナムの宇宙産業の発展に向けた協力に前向きな意見が出ている。

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