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【韓国】木村教授「徴用工判決で訴訟リスク高まる」[政治](2018/11/27)

韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工判決を下したことで、在韓国日系企業の間でビジネスへの影響に対する懸念が広がっている。神戸大学の木村幹教授はNNAとのインタビューで、「訴訟リスクが高まっている。韓国をきちんと『外国』と認識すべき」と助言した。木村教授との一問一答は以下の通り。

神戸大学大学院の木村幹教授(NNA撮影)

神戸大学大学院の木村幹教授(NNA撮影)

――韓国政府は元徴用工判決に対する日本の反応にとまどっている印象だ。

韓国政府は事態を軽視しすぎた。韓国最高裁が「個人の賠償請求権は有効」として日本企業に賠償責任があるとの判断を下したのは2012年だ。今回の判決結果とそれに対する日本側の反応を予測し、それに備える時間は十分にあったはずだ。歴史認識問題では、韓国よりもむしろ日本の方が感情的になっている。

――文在寅(ムン・ジェイン)大統領は今後の対策を李洛淵(イ・ナギョン)首相に任せた。

その李首相が先日「従軍慰安婦に関する15年の日韓合意には法的拘束力がない」と発言したのは驚きだった。これでは、元徴用工判決に対する政治的妥協案に対しても「法的な拘束力はありませんよ」と最初から宣言しているようなものだ。発言のタイミングを含め、日本への対策がその場しのぎである証拠だ。

一方、日本側でも「韓国は合意してもゴールポストを動かす国」という不満が高まっているだけで、判決文が持つ影響力についてきちんと議論されていないという印象を受ける。

――韓国最高裁の判決文のポイントはどこにあると考えるか。

「不法的な植民地支配や侵略戦争遂行に直結した不法行為を行った企業への慰謝料請求権は、請求権協定の枠外であり今も有効だ」とした点だ。これは、1965年の日韓請求権協定を完全に骨抜きにするようなロジックだ。例えば、韓国側の言う「不法行為」を前提にして動員された軍人に対する慰謝料の請求権を認めない理由はなくなる。当時の税金も「不法徴収」と解釈されかねない。このロジックで行くと、最大で2,000万人の韓国人が慰謝料を請求できると話す専門家もいる。

――韓国でビジネスをする日系企業には今後どんなリスクがあるか。

韓国で訴訟リスクが高まったことは間違いない。民間企業同士の契約関係も解釈次第で不安定なものになる恐れがある。民法上の和解そのものに対する疑問もわいてくるだろう。極端な話をすると、韓国で運転していて車をぶつけた場合、仮に相手との示談交渉が成立したとしても、「不法行為を認めなかった」という理由で後日慰謝料を請求されるようになるかもしれない。韓国でのビジネスについて顧問弁護士とよく相談することが大切になってくる。

――「韓国は法治国家ではない」という認識が強まりそうだ。

韓国を「外国」としてきちんと認識していないためだろう。例えば、中国やサウジアラビアに対して「法治国家ではない」と今さら声を荒立てる日本人はいない。韓国も中国やサウジ同様、日本にとって「外国」だ。韓国に対する思い込みや幻想は捨てるべきだ。(聞き手=坂部哲生)

<プロフィル>

木村幹

神戸大学大学院・国際協力研究科教授、法学博士(京都大学)。京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。政治的指導者の人物像や時代状況から韓国という国と韓国人を読み解いてみせる。受賞作は『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(ミネルヴァ書房、第13回アジア・太平洋賞特別賞受賞)など。近著に新潟県立大学大学院の浅羽祐樹教授との共著 『だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」』(講談社)がある。

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