「変われる組織」と「変われない組織」の違いは?キリン高知支店をトップにした男の仕事術
文化放送「The News Masters TOKYO」マスターズインタビュー。
今回のお相手は、キリンビール株式会社・元副社長の田村潤さん。
上司と意見が対立し、左遷人事で全国有数の苦戦地域の一つであった高知支店長に。だが、田村さんは着任早々、ひたすら宴会をまわった。
お客さんの声に耳を傾け、人気のビールの判断材料を集め続けるなど、田村さん他、部下たちが奮闘したことで、県内トップシェアをアサヒビールから奪還した。
(前編:「V字回復させたのは左遷でやってきた支店長。キリン高知支店の営業スタイル」https://leaders-online.jp/bunkahoso/bh_interview/4351)
田村さんはどのようにして部下を引っ張っていったのか、The News Masters TOKYO・パーソナリティのタケ小山が迫った。
組織の立て直し
こうした取り組みが実を結び、高知支店の業績をV字回復させた田村さん。個々人の取り組みについては、このように語っている。
田村:
「仕事は基本が大事」なんです。単純なことを愚直に地道に徹底的に!そうすると、ある時に突き抜ける瞬間があるんです。
基本を徹底的に繰り返す→成長する→さらに徹底的に突き詰める...というサイクル。覚えのある人もいるのではないだろうか?さらにタケが続ける。
タケ:
「変われる組織と変われない組織」があると思います。違いはなんでしょうか?
田村:
変われる人間に共通しているのは、"まず自分でやってみよう!"という姿勢です。
キリンビール、高知支店の例で言うと、女性の方が「まず、やってみよう」の傾向が強く、例えば内勤の女性の方が、パッと提案書を作って、店舗用のPOPを作って、飲食店のメニューも作ってセールスに持たせたりしていた。
変われる組織は、腹を括る人がいっぱいいた方がいいのだ。
タケ:
そうは言っても、ウチの組織は変われないよ...という人はどうしたらいいでしょう?
田村:
まず情報をオープンにすること。リーダーとメンバーが持っている情報量が違うと、本気になれません。自分たちで考えて自分たちで行動する!そうすることで勇気が出てくるんです。
これだけではとどまらない。田村さんは、東海地区本部長のときには、会議廃止をも打ち出す。
「(本社への報告が必要になるため)成績の悪いところは会議が増えるんです。みんな言い訳がうまいんですよ」と語る田村さん。
曰く「会社のお金=お客さんからのお金です。これを使って、従業員に言い訳する能力を開発しているようなもの」とも。
しかし、大事なのは、現在と将来であり、それに関する会議は行ったとのこと。
本社と現場のギャップ
本社・本部以外の場所にいるとそこからの指示に対して「これは本当に正しいのだろうか?」と思う人も多いだろう。
地方の支社にいた田村さんはそのギャップについてどのように考えていたのだろうか?
田村:
上司の指示は正しいことも、間違っていることもあります。その指示に従う基準は、"お客様にとって価値があるかどうか"です。
田村さんの場合、ひとつひとつ、高知のお客さんにとって有益かを吟味した。
「これは徹底してやろう!」「ほっとけ!(無視しろ)」「流しとけ!(軽くやれ)」の3つに区分けして、さらに部下に指示を出した。その仕分け能力は、現場をよく回っていることでその感覚を養うことができるそうだ。
どんな会社も世の中に必要とされている理由がある。
「世の中にもっと必要としてもらいたい。お客さんにもっと喜んでもらいたい」といった"心の置き場"をそこに移すと、いろんな指示が相対的に見られるようになる。
そして、お客さんに喜んでもらうためにやると、やる気が出てくるのだ。
「どうしてこのようなことが生じるのだろうか?」この問いに、田村さんは「役割が違うからです。この役割を乗り越えるのは、自分たちの会社の使命がどこにあるか。あるべき姿と現実は、猛烈なギャップがあります」
本社の大切な役割は、このギャップを埋めていくエネルギーをいかにキープするか。
現場は、現場で学んだことを全社の政策につなげることが大切なのである。
部下を輝かせるリーダーになるために
商品が売れなくなった時は、何をしていいか分からなかったため、部下にやる気を出させることについては考えていなかったという田村さん。
そこにタケが食いつく。
タケ:
しかしなぜ、部下のやる気が出たのでしょう?
この問いに見解は以下の3つであった。
1.情報がオープンになっていた。
2.自分たちで考えて行動ができた。
3.リーダーがブレなかった。
中でも、リーダーはブレやすいものだが、なぜブレなかったのか。
そこには「"お客さんに幸せになってもらう"」ということに、視線が常にいっていたからだ。本社からの指示に従うか否かの基準についてと同じ答えで、まさにブレがない。
タケがさらに深堀りする。
タケ:
では、部下が自分で考えるようになるには?
田村:
自由度を与えることです。得意先にも現場にも何のためにやるか、という軸さえあれば、あと他はなんでもいいです。
ただし、その環境を整えるには、トップも末端も今は大変。中間管理職が立ち上がらないと日本の企業は難しい。
その際、「この会社の使命は何かを頭のどこかにおいておくと良い」とも付け加えた。
「お客さんにとって価値があるかどうか」左遷されるも、一貫してこの信念を貫き通し、結果を出して田村さんは返り咲いた。
ビジネスをする上で、誰もが選択を迫られたり、悩んだりすることもあるだろう。
そんなときは、一度「お客さんにとってどうか」を基準にしてみてはどうだろうか。