「優秀な人材を招いて全部任せる」…その時、電気自動車ベンチャーの社長は何をしてる?
今回の文化放送The News Masters TOKYO「マスターズインタビュー」は、電気自動車の開発、販売を手掛けるベンチャー企業「GLM」の社長・小間裕康さん。
京都発のベンチャー企業が自動車市場に一石を投じ、設立からたった4年で量産EV(電気自動車)スポーツカーを開発・販売している。
そんな小間社長にパーソナリティのタケ小山が、トップとしてどうベンチャー企業を導いているか、自動車ビジネスの未来について聞いた。
「GLM」がパリで発表した次世代のEVスーパーカー「GLM G4」
夢のあるプロジェクト、次世代EVスーパーカー「GLM G4」については―。
「車体もEVシステムも全て1から開発するというプロジェクトだが、実はこのプロジェクト、一旦止めています」と、小間さんから驚きの発言が飛び出した。
「ビジネスモデルとして、まずは完成車を作ってテクノロジーショーケースとしてそれを売る。そして、造り上げた車を、更に大量生産できるようにブラッシュアップしていき、コストダウンしていくことによって、モジュールを他の自動車メーカーに提供するという『プラットフォームビジネス』を展開する。この2ステップで展開する方向で考えていた。
しかし今現在、電気自動車にすぐに市場を変えなければいけないという世の中の流れがあり、世界中の自動車メーカーが、電気自動車に大きく舵を切った。どちらかというと、プラットフォームビジネスの方から、早急に我々の力が欲しいと、依頼が来るようになり、ここに今、チャンスがあるのであれば、集中させていこうと。
一旦、自分達のロマンである完成車ビジネスをストップさせて、自分達が食べられる状態にしていこうと。まずはプラットフォーム事業に特化してやろうとしている段階」と、ロマンと現実を行ったり来たりしている現状を、小間さんは語ってくれた。
GLMの組織論
約30名の従業員を率いるベンチャー企業のトップとして考える「GLMの組織論」とは。
「私はグイグイ引っぱっていくタイプではなく、プロフェッショナルに全部任せるというやり方をしている。人材採用の時も、自分よりも優秀な人間をどんどん招いて、その人にどんどん任せていく、というスタイル。
すると、自由にやっていって、その道で自信のある人が、更に面白い事を見つけていく...ということにつなげられるのではないか、と考えている」と、小間さんは話した。
タケ:
そうすると、社長がいらなくなっちゃいますよ?
小間:
そうですね(笑)
タケ:
その時、社長は何をやっていますか?
小間:
そういう面白い人を集めるという事をやっているのかもしれない。
タケ:
人集めね〜。最近で面白い社員の方はいます?
小間:
広報の彼はもともとアナウンサーです。
タケ:
本当ですか!役に立っていますか?
小間:
今まで彼が、記者としても取材に行っていた経験を活かし、どういうキーワードがわかりやすいのか、記者目線の発想を持っているので、彼が入ってきてからは、色々なところで取り上げてもらう機会が増えた。
そういう一流の人間が集まって来ると、発信力が強くなったり、また、メーカーさんの問い合わせから仕事に変えていくような営業のプロであったり、車を売るプロであったり、エンジニアリングの部品のプロというのが集まるようになると、仕事としても、1つ上の仕事が出来るようになってきているのではないかと思う。
面白い人材を集めるのがどれだけ大事か、ということを思い知らされた。
今後の自動車ビジネスについて
電気自動車への移行や自動運転システムの運用など、自動車産業が変革期を迎えている今、タケ小山は大いに関心のある今後の自動車ビジネスについて尋ねた。
「自動車産業は大きく2つに分かれる。それは、『所有する車産業』と、『所有しない車産業』。実際に、売れていく車は徐々にプレミアムセグメントの割合が多くなってきており、海外を見渡しても、一般車からプレミアムセグメントの比率が上がっているという傾向にある。
その中で、我々は『トミーカイラZZ』であったり、『GLM G4』であったり、所謂『面白い車』というマーケットに完成車ビジネスを送ろうとしている。
もう1つの『所有しない車産業』というのは、所謂『シェア』。世の中の傾向として、車の車種で選んでいるのではなく、どういう大きさの車に、どこで乗りたいか、何時間乗りたいか、というところに変わってきている。
例えば、沖縄に旅行に行って、どこの車種のこれが欲しいとは指定せずに、『コンパクトカーがいい』、『ワゴンがいい』と要求する。すると、提示された車も、日本車ではなくても問題はない。
どちらかというと、ツールとしての使い方になってきている」と、小間さんは現在のトレンドを含めた細かい説明をしてくれた。
「京都のオフィスでは、自動車メーカー様がいらして、ディスカッションをする機会が増えてきた。我々のエンジニアがよく言う言葉『失敗する開発を、GLMは出来る』。
最初から100点が求められる大手の箱の中では、たとえ開発段階であっても絶対に失敗できなかったが、ベンチャーと共同開発であれば、失敗できる環境で開発ができる。失敗を繰り返して、完成品は失敗しないものを造っていく。
そういう試行錯誤を繰り返しながら開発をするという環境が、日本の中に、いつしかなくなってきている。それを我々が提供できるということで、なんとか、この世界の中で会社が存続しているような気がする」と、熱弁してくれた小間さん。
「ベンチャーだから失敗できる」だけでは困るが、「チャンスを与えてもらいたい」そして、「絶対に成功させる」という気持ちがこもっている話だった。
The News Masters TOKYO Podcast 文化放送「The News Masters TOKYO」
http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:西川文野(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)