髪を切るのに最適なのは何分?QBハウス社長が語る「儲かるカラクリ」
ヘアカット専門店「QBハウス」などを運営するキュービーネットホールディングス株式会社代表取締役社長・北野泰男さん。
北野社長は、大阪外語大を卒業後、株式会社日本債券信用金庫(現:あおぞら銀行)に入行。破たんなどの厳しい局面もあったものの、約10年勤め、その後、キュービーネット株式会社に入社。2009年には代表取締役社長に就任した。
『The News Masters TOKYO』パーソナリティーで、プロゴルファーのタケ小山が、今後の理美容業界や10分1000円で儲かる秘密について聞いた。
最大の効率化:10分1000円の秘密
このコーナーでこれまで数多くの経営者と対峙してきたタケ小山。
それと同じ分だけ、独自のビジネスモデルに触れてきた彼からこの質問が飛び出した。
タケ:
10分1000円で儲かるんですか?
北野:
1店舗だけで1000円カットをやるとたぶん儲からないですね。僕らは『10分1000円カット』で時間を売っているんです。
時間をかけて綺麗にカットするのも大切だが、それをいかに10分でお客様の期待している髪型にするのかが大切ともスタイリストに日ごろから話している北野社長。
30分で1000円ならば、それは儲からない。これを1時間で4人来れば、4000円と普通の理美容店と変わらなくなる。
普通の理美容店は「朝だけ忙しい」「土日だけ忙しい」でもQBハウスは店舗ビジネス。
立地にもこだわっているので、「月曜から金曜が忙しい」場所に出していく。稼働率の商売なので、そういう場所に出すことと、時間にこだわることが強みであり特徴ともいえる。
タケ:
10分という時間は、どう意識していますか?
北野:
QBハウスを利用するとお客様には分からないところでスタイリストが何分で切っているかわかるようになっています。
本部にはデータで、○○店のスタイリスト××さんが切った時間がデータとして表示される。
15分で切ったからダメということではなく、自分の今の状況が数字やデータで把握できるような環境を作っている。
自分では「10分で切った」とスタイリストが思っていても、意外と15分、20分経っていたというケースもあるためだ。
もちろん、店舗・土地によって客層は違うので、そのお店ごとに合わせて「女性のお客様が多いから美容師でオペレーションした方が良い」、「サラリーマンの男性が多いため、かりあげの得意な理容師さんを沢山入れた方が良い」などの細かいオペレーションを出すのも、現在のビジネスを成立させている一要因だ。
お客さんは、時間をかければその分満足度は高まる。しかし、QBハウスに来るお客様はどういう人か、それは基本的に面倒くさがりということ。
パッと入って、パッと出たいからスタイリストがより丁寧にやるというより、限られた時間の中でベストなパフォーマンスを行う必要がある。そしてそれがQBハウスの理美容業界の中での存在意義なのでもある。
「表参道の単価の高い美容室から転職の人が多い」
QBハウスに集まるスタイリストにはある傾向があるという。それは業界をずっと転籍・転職してきた人。
その中でも特に...
北野:
表参道の単価の高い美容室から転職してくる人がとても多いのです。
そこには理美容業界に根付く風習が関係していた。業界的に「技術は見て盗め」という考えが広がっており、修行期間が非常に長いのである。もちろん専門学校などに行き、勉強はするが、カットの勉強は実践が必要で学校では学べない。
いざ現場に出ると下積みが「洗髪」から始まり、「パーマ」→「ロット巻き」→「カラー」→「カット」は最後。そこにたどり着くまで短くても3~4年、個人店の場合は10年間カットまでにたどり着かないという人もいるが、皆やりたいのは「カット」。
従来の理美容店と比べて「自分のやりたいカットがすぐにできる!」という熱い思いを持った人が入ってきてくれているのだ。もちろんいきなり現場に行くわけではなく、6か月間の独自研修を行ってからである。
理美容業界の風習に、風穴を開けたキュービーネット・北野社長。彼は今何を見据えているのだろうか?
タケ:
これからの理美容業界、どうなるのでしょうか?
北野:
かなり理美容室の数があるので、銀行のように良い意味で、広がったものは統合されていくというタイミングがあるでしょう。その中で、質が上がったり、個性が出てくる。さらに歴史をたどっていくとさらに広がっていく。これはどの業界でもそうです。
そう語るには根拠がある。理美容業界も2005年が一番広がったが、そこから徐々に統合されている。加えて、理美容業界は平均年齢が70歳近くになってきたので、世代交代という課題もある。
業界トップで走ってきた世界的ヘアドレッサーのヴィダル・サスーン氏を支持して走ってきた人たちも70歳。その後、誰が引き継いでどういう束ねていくのかという問題が起こってくる。
特に2020年が一つのターニングポイントと言われているが、生活に密着している業界のため、お客がもっと選択していくようになるのではと北野社長は分析している。
例えばキュービーネットでは今、女性のお客様が増えている。節約志向もあるだろうが、『カットはこの店』『カラーはこの店』とお客が選ぶのだそうだ。
詳しく聞くと、「予約を入れると『今月もパーマ・カラーですよね?』と言われて、前髪だけカットしてほしいと言いにくい」とのこと。
身に覚えのある方もいるのではないだろうか?
今までは総合的な面でお客様の満足度を高めていたが、これからの時代は、より専門化、専門性に自分の受けたいサービスを選べると求められるという風に変わっていくのではないか?
北野社長は、今後の未来についてそう語ってくれた。
カットコンテストに消極的だったベテランスタイリストや職人気質の「見て盗む」の風潮からも分かる通り、理美容業界にはどこか旧態依然としたものが、今も漂っている。
それを心地よいと感じる人もいれば、一方でそれにより機会を阻まれている人・現場があるのもまた事実。キュービーネットでは、他にも給与面では同世代の会社員くらいの給与を従業員に与え、社会保険も完備するなど、これまで業界では不十分だったそれを従業員に保障している。
海外進出して、広がりをみせるキュービーネットの事業。
これが次に統合されるとき、世界の理美容業界に、技術以外の面でもまた新たな時代が始まるのかもしれない。
The News Masters TOKYO Podcast 文化放送「The News Masters TOKYO」
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パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:西川文野(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)