温泉旅館なのに週休3日!それでも売り上げ倍増させた秘密
文化放送『The News Masters TOKYO』マスターズインタビュー。
今回のお相手は、神奈川県鶴巻温泉の旅館「元湯陣屋」の女将・宮崎知子さん。
結婚相手の実家であった「元湯陣屋」は、将棋のプロ棋士を招いての将棋会場になっているだけでなく、明治天皇も宿泊したこともあるほどの由緒ある旅館。
1泊およそ4万円という強気の値段設定ながら、現在は予約の絶えない状況が続いているという。
しかし、もともとは10億円もの負債があった倒産寸前の状況だったという。
女将経験ゼロの宮崎さんはどのように改革を断行したのか、番組パーソナリティ・タケ小山が迫った。
老舗旅館は問題だらけ
タケ:
最初の印象はどんなものでしたか?
宮崎:
まずいなというのがありまして、まずお客様の情報が共有できませんでした。
当時の元湯陣屋は、単体タスクで、人数が多すぎたのだ。
社員20名、アルバイト100名、客室20部屋。お客の情報が伝わっておらず、迷惑をかけている状況だった。
ある常連客は、「いつも宴会の終了10分前にタクシーを呼ぶはずが来ていなかった」と憤慨。
タケ:
何故このようなことが起こったのでしょうか?
スタッフから返ってきたのは、「いつも電話しているフロントの〇〇さんが今日は休んでいる」「私は電話する係じゃないから」という意見。
責任感も分散していた。
「言われたことしかやらない。動かずが吉」の状況を抜本的に変えないと、という危機感が宮崎さんに芽生えた。
2009年の10月に女将に就任、11月に方針を決めて、12月には二つあるうちのレストランを一つ閉めた。
タケ:
反発はなかったんですか?
宮崎:
あったかもしれません。このままだとまずいということで、状況をすべて従業員に公表しました。
意外なのは、これだけの行動に出ながらも、再建できるとは思っていなかったという点である。
宮崎:
人に任せて『やっぱりできません』は、逃げ道がないです。自分たちがやった方がいつ資金がショートするかわかるので、自分たちでと思って後を継ぎました。
旅館もITでマルチタスク化
当時の問題点は他にもあった。当時の元湯陣屋は、全てがアナログ。
宿泊台帳はA2サイズのもの1冊を共有。HPはそこから直接予約もできず、個人の趣味のページのようなもので訴求力も乏しいもの。
挙げていくとキリがないほど、すべてを変えないといけないと思った宮崎さんであった。
タケ:
そこでIT導入をしますが、どう変わったのですか?
宮崎:
どこにどれだけムダがあるかもわからなかったのです。それを明確化するためにデジタル化が必要でした。ただ、ITを導入したから"バンザイ!"ではありません。
頑張れる環境を整えて、仕事を「マルチタスク化」したのだ。
例えば、サービス係りがお迎えからご飯の案内から布団敷きからお見送りまで行うように。
タケ:
結果が出るにはどれくらいかかったのですか?
宮崎:
2年くらいです。
スタッフにとっては、データをなかなか活用できるシーンが少なかったので、やっていることが正しいのかという疑心暗鬼に応えられなかった時期は精神的につらかったとも当時を振り返る。
週休3日で売り上げが倍!?
元湯陣屋は、2014年に業界では異例の週休3日制を導入。
しかも、宿泊単価は9800円から3万5000円にアップしている。
この強気な姿勢は着実な成果を上げており、売り上げは倍、さらに社員の年収は4割のアップ(年収398万円)を果たした。
それでいて離職率は33%から4%に激減。このからくりにタケが食いつく。
タケ:
驚きの週休3日。これはどういうことですか!?
宮崎:
主人と私で3年間休まずに働いたら体がおかしくなったんです。
自分が無理なら、同じスピードで頑張ってきたスタッフも疲れている。
さらにこれではお客にも迷惑をかけてしまうと考えた宮崎さん。
倒産は免れたので、事業継続へのギアチェンジをする際に、週休3日を取り入れたのだ。
タケ:
それでいて売上は倍で、従業員の年収は4割アップ。なぜですか?
宮崎:
生産性が上がったんです。
木曜日~日曜日は全力で働き、月曜日は有給休暇の推奨日。夕食と宿泊の予約を取らなければ、半分の人数で回せるのだそうだ。これにより気持ちをリセットできる。
休日を自由に使ってもらい、休むもよし、遊ぶもよし、副業もよし。サービス業なので、そこで経験したすべてが従業員自身の提供サービスにフィードバックするという理屈だ。
しかし浮かぶのはこんな疑問。
タケ:
休むのは、もったいないのでは?
宮崎:
お休みがあるから頑張れるというのもありますし、お休みの効果としては、スポーツでいうレギュラーメンバーでいつも戦えます。
補欠がいない分、チームワークが向上し、営業中は全員で迎えるという連帯感が生まれた。週休3日、実に良いことずくめである。
文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。音声で聞くには podcastで。
The News Masters TOKYO Podcast 文化放送「The News Masters TOKYO」
http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:西川文野(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)