乗換案内ジョルダンは「グーグルに負けない地図」を作れるか
学生の頃から、駅から駅へどのように乗り換えれば効率的に移動できるかを考えることが好きだったというジョルダン株式会社・代表取締役社長の佐藤俊和さん。
乗換案内などのコンテンツを中心に、さまざまなソフトウェアやサービスの開発を手掛ける佐藤社長のこだわりと夢にタケ小山が迫る。
もっと便利に、もっと楽しく
ジョルダンの創業から、今年で38年。
「38年間の会社経営において一番大事にしてきたことは何ですか?」と、タケ小山にとって、これは非常に気になるところである。
この質問に、迷うことなく佐藤社長は答えた。
「とがった切り口から便利になるように動いていきたい」
世の中は、もっと便利に、もっと楽しくなるはずだという。
たとえば、キャッシュレス。「中国のマーケットは近年、どんどん変わって、進化しています。スーパーマーケットで現金を使えないというところまで現れてきているほどなんです」と、中国の上海に拠点があるジョルダンは、海外の状況も的確につかんでいる。
「アメリカはもちろんですが、中国もキャッシュレスの世界に入ろうとしています。この点では日本は遅れていますね」
常に新しいアイデアが頭の中に浮かび上がるという佐藤社長。「こんなことができたら便利だな、もっと楽しくなるな」という空想がベースになっているという。
「ジョルダンのサービスは『移動』が強みなので、移動を軸としていろんなことをやっていきたい」と語る。
タケがこんなことを提案してみた。
「海外への乗換案内なんてどうですか?たとえば浜松町からニューヨークの5thアベニューまでの最短経路が分かったら、すごく便利ですよね」
少しふざけも混じった提案を笑い飛ばすかと思いきや、「それもすでに考えています。近いうちに出来ると思いますよ」とまったく動じずに答えた後で、佐藤社長はさらにこう付け加えた。
「飛行機のチケットを乗換案内からそのまま買えるようにしたいという構想もあります。楽に目的地に着けること、楽に交通手段に乗れることを次々に実現していきたいんです」
ジョルダンでは「行き方案内」というアプリもすでに開発済みだ。
「目的地までの道のりをどう歩けばいいかをわかりやすく案内するサービスです」
駅の出口情報をすべて持っているからこそできる「降りてからの行き方」を丁寧に音声で案内してくれる。
「現在は乗換案内とは別のアプリとして出していますが、今後開発を強化して精度をもっともっとあげて、最終的には乗換案内の中でもこのサービスを利用できるようにしていきたいと考えています」
佐藤社長の掲げる「日常に欠かせないサービスを、もっと便利にもっと楽しく」という夢を、創業当時の3人から今や200人近くにまで増えたジョルダンの社員全員が、日々追いかけている。
大雑把だからこそ、大きな夢を描くことができる
「普段、あんまり怒ることはないですね」と言う佐藤社長。
たしかにインタビューの間も、どんな質問にも始終笑みを絶やさず、穏やかな口調で答えてくれる。
「それでも長年社長として仕事をしていたら、こんなんじゃダメだ!なんて腹の立つこともあるでしょ?」と突っ込むタケに、そう言えば…と、こんなエピソードを話してくれた。
「少し前まで、プロジェクトごとに独立採算の形をとってチームごとに動いていたんですが、ある時ふと気づいたらチームごとに壁ができてしまっていて、縦文化が発生していたんです」
縦文化は、気軽に頼みごとがしにくくなったり自由な意見の交換を阻んだりなどにつながり、弊害が大きいという。「これは、壊さないといけないと思った」という佐藤社長は、オフィスの移転を決意する。たった200mしか離れていない場所にオフィスを移し、壁を取っ払ってオープンなフロアを作り、さらに社内のルールも変更した。
「変えることを恐れてはいけない。世の中も変化するんだから、僕らも変化しないといけないんです」
大きな変革の際には大胆なルール変更も辞さない。優しい穏やかな笑顔の奥には、常に強さが潜んでいるのだ。
バスの情報の拡大をやろうと決めた時には社内で猛反対にあったというが、「いろんな仕事の最終決定は、僕がやっています。多数決では決めない。方向性はみんなで同じ向きに合わせたいんです」。
とにかく「移動」にこだわり続けたい。移動した先にどんなレストランがあるのか、ライブハウスでは何が楽しめるのかを全部丸ごと案内したい。さらに「緊急時の案内もやりたいし、声で伝えるサービスも導入したい。それも、無機質な声ではなくてぬくもりのある声で…」と、やりたいことを数え上げるときりがない。
実現に必要なのは、「やりたいことにかける想いと開発者のしつこさ」だと笑う佐藤社長。
「それさえあれば、必ずものはできていくんです」
突拍子のないアイデアが突然湧いて出てくるという佐藤社長は、その理由を「僕が大雑把だから」と言う。
「大雑把で細かいところまで考えないからこそ、『こんなこともできるんじゃないかな』って勝手に思い込んで走り出すんでしょうね」
今、抱いている夢の一つは「グーグルに負けない地図を作ろう!」ということ。業界の人間からは「君はドン・キホーテか?」とあきれられていると苦笑しつつも、「この領域では僕たちは負けないで頑張っていきたいんです」。
趣味はゴルフとジョギング。
「どれくらい走ったか、どれくらい歩いたかもすべてデータを取っているんです」と、佐藤社長は私生活でもデータ魔のようだ。「ちなみにゴルフの時はどれくらい歩きますか?」というタケの質問に「1万7000歩くらいです」と即答。
「おっ、それはあんまり球が曲がって飛んではいかないってことですね」とプレイを読むタケに「わっはっは」という大笑いが、旅先で買ってきたという絵が飾られた午後の明るい社長室に響きわたった。
文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。音声で聞くには podcastで。
The News Masters TOKYO Podcast
https://itunes.apple.com/jp/podcast/the-news-maste...
文化放送「The News Masters TOKYO」http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:小尾渚沙(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)