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「42歳が人生のゴール」ネスレ日本社長が伝えたい“仕事との向き合い方”

ネスレ日本社長の高岡浩三氏。神戸大学経営学部卒業後、外資系企業であるネスレ日本に新卒で入社し、生え抜きでトップまで上り詰めた高岡氏の仕事との向き合い方やリーダーシップ論は、今まさに現場で日々汗を流すたくさんのビジネスパーソンにとってより良い未来への大きなヒントになるだろう。

スポーツマネジメントを学んだゴルフ解説者のタケ小山が、ズバリ!高岡氏の“仕事術”に迫った。

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逆算からのスタート~「ブランドで人を幸せにしたい」

ネスレ日本社長の高岡氏と言えば、2013年に出版された「逆算力」(日経BP社)を思い浮かべる人も多いだろう。「なぜ、逆算なのか?」改めてご本人に聞いてみた。

「小学5年生の時に父親を42歳で亡くすという経験をした。と同時に、祖父も同じ年齢でこの世を去ったことを知って、42歳という年齢を“ゴール”と意識するようになりました」と高岡氏は語る。

「42歳で人生が終わるかもしれない。そう考えた時に、ではあと何年あるのか?それまでに成し遂げたいこととは何か?そのためには、いつまでに何をやる必要があるのか」そんな風に考える習慣がついたという。

人より短いかもしれない人生なら、人のスピードの2倍、3倍で進んでいこうと決意し、実際にその通りに動いた。それが時代のスピード感とフィットしたことで、大きな成果を出せる仕事につながったのだろうと振り返る。

現在は、42歳を無事通過して57歳になった高岡氏だが、やはり今も常にゴールを設定した上で逆算して考える。自分が何のためにここに生まれて、何を成し遂げて死んでいくのか。

「いつまでに、どういうことを、どこまで実現したい」という具体的な目標設定を持つことが大切だという。

「今思えば、それが親父から息子への遺言だったのかなと感じています」

大学卒業後に外資系企業であるネスレ日本を選んだ理由の一つも、逆算力が働いたからだ。

「当時は外資系を選ぶ人は少なかった。人気があったのは関西地盤の商社や銀行。でも、そのころの日本の企業は年功序列が当たり前で、42歳で自分のやりたいことができる地位に就くのは難しいと思った。外資系は実力主義なので、時間に関係なくやっていけるのではないか」と考えたという。

もちろん、それだけが理由ではない。

「私たちの時代はブランドがすごい魅力を持っていて、みんながブランドに憧れていた」

バブルはまだ訪れてはいなかったが、確実に日本経済がぐんぐん成長していた70年代後半から80年の初め頃。背伸びをしてでもブランド物を持ちたかったし、それによって幸せを感じられるという経験は当時を知るものには懐かしい記憶だろう。

「僕も覚えていますよ」と、タケ。「どんな車に乗るか?を友人たちと楽しく競い合ったりもしましたね」。

それを受けて、高岡氏はこう続ける。
「ブランドがそれほどにも人を惹きつける、ワクワクさせる。その力っていったい何か?と思ううちに、ブランドでたくさんの人を幸せにできる仕事がしたいと考えるようになりました」

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ブランドに人格を~「キットカット」が広く長く愛され続ける理由

ネスレにはたくさんの有名なブランド商品がある。高岡氏が40代になって担当した「キットカット」もその一つだ。

「当時は、テレビでCMを打てば売り上げが伸びるという時代ではなくなっていました」

知名度はすでに十分ある。商品名を連呼しても売り上げは伸びない。だが、一方で気づいたことがあった。

「例えば、テレビで白衣を着た人が『ワインのポリフェノールが体にいい』というようなことを話すと、売り場の棚からワインがごっそり無くなるということが起こっていました」

この現象の理由を考えた時に、宣伝とPRの違いをつかんだという。

「ラーメン屋の店主がいくらうちのラーメンはおいしいと言っても、それは信用できない。でも、友達があの店うまいよと言えば食べたくなる。それと同じです」

そこで思いついたのが「広告ではなくてブランドにニュースを作る」ということだった。

「ニュースは、みんな誰かにしゃべりたくなりますよね」とニッコリ笑う高岡氏。「なるほど!」と、思わず身を乗り出すタケ。「でも、いったいどんな風に?」

なんと!そこで生まれたのが「キットカットはきっと勝つ」というかの有名な受験生応援キャンペーンだったのだ。もともとは九州で「きっと勝っとお」(九州の方言で「きっと勝つよ」の意)とゲン担ぎで購入する人が多く、受験シーズンの売り上げが好調だということを知ったのがきっかけだったという。

このキャンペーンは大成功を収め、売り上げも利益も大幅に拡大。しかも、それ以来十数年が経った今も効果は続いている。「こんなに長く続くプロモーションはこれまで誰も経験したことはなかった」。

ただ、この成功は単に偶発的に生まれただけのものではない。「ブランドをつくるとき、私たちはブランドに人格を与えます」と高岡氏は語る。


「キットカットには、もともと“Have a break, Have a KITAKAT.”というコンセプトがあった。この“break”の意味は国によって違う。日本では、“ストレスからの解放”がそれに当たると思った。困っている人やストレスで緊張している人のそばにいて勇気づけてあげられる、そういう人格を持ったブランドであって欲しいと考えていました」

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南リアス線の盛駅~吉浜駅再開時(2013年)

原点にあるその想いが、受験生応援につながり、東日本大震災の後には三陸沿岸地域の支援にもつながった。「困っている人のそばにいたい」という人格は、他のチョコレートには真似のできない、「キットカット」だけが得ることのできた強力なブランドイメージである。

「長く愛されている理由は、そこにあるのだと思います」


<後編に続く>「大事なのは、勝ち方を知っていること」ネスレ日本社長が語るリーダーの資質

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文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。音声で聞くには podcastで。
The News Masters TOKYO Podcast
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パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:小尾渚沙(文化放送アナウンサー)
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