母にマグロを食べさせたい。「すしざんまい」木村清社長のこだわり
関東を中心に24時間営業の寿司チェーン店「すしざんまい」を展開する喜代村の木村清社長。多くの試練を乗り越え現在に至る「すしざんまい」のエピソードから、木村社長のマグロへのこだわり、経営者としての強い信念にタケ小山が迫る。
マグロへのこだわり
新春の風物詩として知られる東京・築地市場のマグロ初競り。そのなかでもひときわ注目を集めるのが木村社長である。
値付けが高騰する初競りのマグロを豪快に落札し、周囲からは「マグロ大王」と呼ばれる木村社長のマグロへのこだわりを聞いてみた。その原点は父を亡くした4歳のときまでさかのぼる。
「父が亡くなってからは生活が急に苦しくなった。しかし母はいくら貧乏になろうとも義理と人情は欠いてはいけないという気概の持ち主で、家族に少しでもいいもの食べさせようと法事や結婚式に行くたびにマグロを2、3切れ持ち帰ってきてくれた。賽の目に切ったマグロを家族4人で食べているとき“将来はおふくろにいっぱいマグロを食べさせたい”と強く思った」
このときの想いが、今なお抱き続ける「お客様に一番いいマグロを食べてもらいたい」というマグロへのこだわりにつながる。
すしざんまいのファンなら「今年の正月も木村社長が必ず競り落として、最高の初マグロ食べさせてくれる」と疑うことなく思うだろう。実際にタケもそのようなことを年明けにtwitterでつぶやいた。しかし、初競りは価格も安定せずライバルも多い。毎年そう易々と競り落とせるものではない。とくに中国で寿司ブームが起きた年は苦戦した。
「初物は日本人にとって縁起物。特別な価値があるからこそ、すしざんまいで食べてほしい。だからこそ中国には負けられなかった。もちろん、たくさんの人に楽しんでほしいから初競りのマグロでも通常の価格で提供する」
すしざんまいのここがすごい
24時間・年中無休の寿司屋という前代未聞の触れ込みとともに、「お寿司と言えば“すしざんまい”」のキャッチフレーズでその名を全国にとどろかせた木村社長。すしざんまいのすごさを木村社長はこう答える。
「これはお客様に感じていただくしかない。手前みそになってしまうのは良くない。むしろ、ダメなところを言ってもらえればどんどん改善する。24時間・年中無休にしているのはお客様がお寿司を食べたいと思ったときに、定休日だったり、ネタ切れで早閉めしているのはいい加減だと思ったから。そうまでして寿司業界を盛り上げないと寿司職人がいなくなってしまう。潰れるまで続ける覚悟で今日までやってきた」
ダメなところを言ってもらえればどんどん改善する。そう言った木村社長の社長室はガラス張りになっている。社長と社員がお互いどのような状態か把握でき、問題が起きればすぐに相談しやすい環境が整っている。お店でお寿司を食べるだけでは分からない“すしざんまいのすごいところ“がそこにあるのではないだろうか。
ピンチはチャンス
すしざんまいをここまで成長させるには、多くの試練や絶対絶命のピンチがあった。
「ピンチや修羅場はいくらでもあった。すしざんまいがオープンして1ヶ月半たったころ明け方に店に行ったら、職人たちが清掃を理由に店を閉めようとしていた。怒ったら、職人たちは包丁をもってぞろぞろと出ていってしまった。もう俺ひとりでもやると腹を据え、ひとりだけ残った職人とふたりで店に泊まり込んでしのいだ。そういう修羅場を何回くぐったかが人生なんだ。だから、ピンチは大きい方がいい」
さらに、木村社長はピンチを乗り越える方法についてもタケに教えてくれた。
「そういう状態になったら、人は愚痴や悪口を言いたくなる。たしかに言いたくなるけど、私は言わない。世の中が悪いと言ったり、社長が悪いと言っても始まらない。今何ができるかを見つけることが大切」
木村社長の夢
さまざまな困難に立ち向かいながら、すしざんまいを大きく成長させた木村社長。日々世界中を奔走する先に、いったいどんな夢をもっているのだろうか。
「努力をすれば絶対に叶うから、夢は捨ててはいけない。人間っていうのはもうだめだと思ってしまうのだけど、あきらめない。あきらめないから今日がある。今の夢は世界平和。まずは日本の借金がなくなって明るく元気のいい国にしたい。そのためにも、日本人にはお寿司を食べて元気をだしてほしい」
さらに、夢を追い続けるためにリフレッシュをするのも大切だという。
「もうだめだと思うときは疲れているとき。そういうときは布団に入って心のスイッチを完全に切り替える。少し時間があるときはカラオケで歌ったりもする。いま歌いたいのは松山千春の“大空と大地の中で”だね」
心に残る一言
1979年に喜代村を創業してから今でも経営者として前線に立ち奮闘する木村社長。
そのエネルギーはいったいどこから湧いてくるのか。それは木村社長が大切にしているひとつの言葉が礎となっている。
「15歳で自衛隊に入ったときにおふくろから“人に後ろ指を指されることをやるな”と言われた。他人がみていなくても陰に隠れて悪いことをすれば天と地と己が知っている。自分が悪いことをした分だけ運は落ちていく。だから、人にいいことをする。いいことをすれば人から必要とされる。必要とされることが一番のエネルギーとなる」
最後に、タケがインタビューを通して一番気になった質問してみた。そんな百戦錬磨の木村社長でも失敗してしまうことはあるのだろうか。
「私も人間だから、人に失礼なことを言ってしまったりと失敗はある。ただそういうときはこっそり隅田川の川辺でゴミを拾ったりする。でも、植え込みのゴミなんかを拾っているときにかぎって常連さんに見つかって“社長、なんか落とし物ですか?”なんて聞かれちゃうんだけどね(笑)」
木村社長の熱い想いが詰まった「すしざんまい」では今日も24時間、美味しい寿司が握られている。
インタビューを音声で聞くには podcastで。
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文化放送「The News Masters TOKYO」http://www.joqr.co.jp/nmt/(月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:小尾渚沙(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)