【ミャンマー】国軍が安全維持掲げ兵士配備[社会](2021/02/16)
クーデター発生後、2度目の週明けとなった15日、ミャンマー国軍は最大都市ヤンゴンを含む主要都市で市民の安全維持を掲げ、装甲車や兵士を本格的に配備した。国軍が法律の条項を一部無効にして当局の逮捕権限を強めたことで、デモ参加者は減少したが、収束はしていない。衝突による不測の事態を避けるため、ヤンゴンの進出日系企業の多くが通常業務を見合わせている。
国軍は14日夜、国軍系ニュースを通じ、治安悪化に伴う市民の不安を理由に「警察や消防とともに(市街地などでの)警備を行う」方針を発表。15日午前1~9時までは、インターネットサービスを遮断した。公務員などが業務をボイコットする、市民不服従運動(Civil Disobedience Movement、CDM)などを阻止し、デモを沈静化するのが狙いとみられる。
一夜明けたヤンゴンでは、主要な行政機関や大規模デモの会場そばなど複数の場所に、装甲車や放水車などが配備。幹線道路などでも国軍車両が隊列で走行する様子がみられた。ヤンゴンでは15日午後6時(ミャンマー時間)時点で、国軍当局の武力行使は確認されていないが、首都ネピドーや東部モン州では、これまでに発砲が行われている。地元メディアによると、北部カチン州でも催涙弾の使用や発砲があったもようだ。
在ミャンマー日本大使館は15日、「時間や場所を限らず周辺の状況に注意し、集会やデモには近づかないように」とあらためて呼び掛けた。
デモが多い市街地に事務所がある企業の大半が、15日の業務を自宅作業に切り替えた。日系サービス業の幹部は「事態が不安定なので、明日の勤務体制をどうするかを連日協議する状況にある」と話した。
中心部から遠い工業団地では、操業を続ける企業もある。ヤンゴン近郊のティラワ経済特区(SEZ)では、部分的な稼働を含めると約7割の67社が操業した。
先週から地場銀行の行員による大規模デモが行われている、ヤンキン郡区のミャンマー中央銀行前には、国軍の装甲車や兵士を乗せたトラック、放水車、警察車両など10台余りが配備され、兵士や警官がデモ隊と向かい合った。
国軍が逮捕権限を強化したにもかかわらず、行員らはインターネットサービスがまだ復旧しない午前9時前から集結。「スー・チー氏を解放せよ」「市民不服従運動に協力を」などと書いたプラカードなどを掲げ、中銀職員の出勤を阻んだ。
■銀行の大半、閉鎖したまま
行員のデモ参加により、国内の銀行は業務が停滞したままだ。地場カンボーザ(KBZ)銀行、協同組合銀行(CB)、エヤワディ銀行(AYA銀行)など民間大手3行を含め、ほぼ全ての店舗が閉店しており、インターネットバンキングによるオンライン取引だけが可能な状態が続く。
国軍系複合企業傘下のミャワディ銀行は開店したが、複数の支店が正午前に閉店した。来店者が会員制交流サイト(SNS)に投稿した内容によると、現金を引き出す人が殺到して混乱が生じたもようだ。
ミャンマー中銀が毎営業日に更新している外国為替市況のデータによれば、銀行間の為替取引は15日も成立しなかった。非成立は4営業日連続となる。
行政機関も、大半は正面玄関を閉めており、実質的な業務停止が多い。ダゴン郡区にある国立衛生研究所(NHL)は入り口に、「10日から新型コロナウイルスの検査を停止した」との張り紙を掲示。15日に所持品を取りに訪れた男性職員は「多くの職員がデモに出掛け、所内には誰もいない」と話した。
中心部のダウンタウン地区では、コンテナトラックの運転手らによるグループや通信サービス事業者の従業員によるデモ隊が、放水車や兵士が乗った車両が行き交う横を行進した。地元メディアが業界団体幹部の話として明らかにしたところによると、国内では約2,750台のコンテナトラックが運行しておらず、食料品や医薬品などの必需品を除く輸送が停滞している。