クラウドファンディング型ふるさと納税。新しい資金調達法が地域の課題解決へ!
2008年からはじまったふるさと納税も、今年で12年目を迎えました。
実質2000円で納税した地域の名産品や、希望の商品が受け取れる点ばかりクローズアップされることが多いふるさと納税ですが、ここ数年注目されているのが、「ガバメントクラウドファンディング」、あるいは「クラウドファンディング型ふるさと納税」です。
これは、純粋な「寄附」の側面が強い点が特徴で、高価な返礼品競争と一線を画している点が注目されています。今回は地域の新しい資金調達方法として、今後も増え続けるだろうクラウドファンディング型のふるさと納税についてご紹介しましょう。
ふるさと納税で、復興を支援
ふるさと納税とは、現在住んでいる都道府県・市町村以外にも寄附という形で納税できる制度のこと。寄附できる金額の上限は、年収や家族構成によって異なりますが、寄附金から2000円を引いた額が原則控除される点や、寄附先から特産品などの返礼品がもらえるということで人気になった制度です。
その税控除や返礼品などの金銭的オトク感が注目されがちですが、2018年ころから「ガバメントクラウドファンディング」あるいは「クラウドファンディング型ふるさと納税」といわれる、特定事業にダイレクトに寄附できるふるさと納税が一気に増えていることをご存じでしょうか。
思い起こせば、西日本豪雨や大型台風などの大規模災害が起きた2018年。小口の資金調達を広範囲に広げて、より大きな資金として活用していくのがクラウドファンディングの手法ですが、被災地自治体がクラウドファンディング型で復興支援金を募り、それに共感する人が寄附という形で支援していく環(わ)が、ふるさと納税を通じても広がったのです。
わずか2日で、1億円突破!
日本初のガバメントクラウドファンディングが誕生したのは、2013年9月のこと。埼玉県宮代町で、地元の山崎山を守るプロジェクトの支援金をふるさとチョイスのホームページで募集したところ、ふるさとチョイスホームページによると総額500万円の募集に対し、900万円以上の寄附が集まったそうです。
この宮代町の成功から6年、ポータルサイトであるふるさとチョイスだけをみても2019年には242件のクラウドファンディング型の募集があり、その内容は災害による被災地復旧支援、子育て支援、動物愛護への支援や地域の課題解消への支援など多岐にわたるものでした。
なかでも2019年10月末、沖縄の文化財である首里城が火災により焼失したことは、多くの人の記憶に残っている悲しい出来事ですが、このニュースと同時に話題になったのが、首里城再建へ向けたふるさと納税による寄附金が、募集から2日で1億円を突破したことでした。人々の関心の高さがダイレクトに反映され、またその想いを形にしやすいのが、クラウドファンディング型ふるさと納税の特徴といえるかもしれません。
クラウドファンディング型ふるさと納税は、地方創生のカギ?
寄附する側から見ても、運営母体が自治体であるという安心感や、寄附金に対する控除額の大きさ、自分の税金を具体的に提供できるという寄附のしやすさがあります。
総務省も、クラウドファンディング型のふるさと納税に取り組む地方団体を後押しするため、「ふるさと起業家支援プロジェクト」や「ふるさと移住交流促進プロジェクト」を立ち上げました。
「ふるさと起業家支援プロジェクト」の場合、支援を受けられることが決まった起業家はふるさと納税により寄附金を集めることができ、さらに、その自治体は国から特別交付税を受け取ることができます。成功すれば、人やモノの動きが活性化する地域経済の好循環を生み出していくことも期待できます。このため、ふるさと納税をしてくれた人にも、継続的に関心を持ってもらうつながりが必要となっていくでしょう。
──このように、昨今大きく加速しているクラウドファンディング型ふるさと納税ですが、やはり魅力的なコンテンツでなければ集客は難しく、人気の事業にかたよりが出てくるかもしれません。しかし、さまざまな可能性を秘めたクラウドファンディングとふるさと納税の組み合わせに、地方創生のカギがあるともいえることは確かでしょう。
≪記事作成ライター:ナカムラミユキ≫
千葉出身。金沢在住。広告制作会社にて、新聞広告を手がける。映画、舞台からメーカー、金融まで幅広い記事広告を担当。著名人インタビューや住宅関連、街歩きコラム、生活情報まで興味の赴くまま執筆しています。