金融不況のいま資産運用をはじめるならREITに注目!
老後資金として年金以外に2000万円必要との金融庁の報告書が出て、どのように資金を運用してお金を増やしたら良いのかをあれこれ考えている方が多いのではないかと思います。
投資を始める良い提言となっているようで、金融機関の各種セミナーには多くの参加者が押し寄せているようです。
前回も説明しましたが、①投機、②投資、③資産運用、④待機資金、と言ったリスク度合いに応じて資産運用することを心掛けましょう。
現在の金融市場
現在の金融市場は、米中貿易摩擦により一向に出口の見えない市場環境にあるようです。トランプ大統領はまるで金融市場の主役で、投資のメイン市場である株式市場の環境には暴風が吹き荒れる現状ではないでしょうか。
国内外の株式市場で投資、資産運用するのには現在は不適な時期でしょう。しかし、余裕資金のある方は、ある程度の耐えうる資金を投機資金として位置づけし株式市場へ投入することは可能であると思います。
全体の保有資産のごく僅かな資金を投機資金として投入することになり、うまく底値近辺で仕込めば大きな運用益が得られますが、これを成功体験としてメインの投資方法と認識してしまうことは投資家としては失格と言えます。
現在はリスクをとる資金は少なくし、むしろ待機資金としてMRF(マネー・リザーブ・ファンド)で保有するのが良いと思います。
外貨投資
外貨投資環境に少し触れておきましょう。
日本の年金運用機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、7月に外貨で運用する資産の内のかなりの部分に為替ヘッジに乗り出すと発表しました。
外国債券だけで約278兆円の資産がありますが、この先、米国、欧州、そしてオセアニアの各中央銀行は利下げを続ける見通しであり、高い利回りを確保できないばかりか外貨安が予想されます。
反対に日本円は世界中からリスク回避通貨との認識が浸透していて、米中貿易摩擦、Brexit、中東でのイランと米国の摩擦などを材料にリスク回避の円買いに向かう傾向になります。
準公的機関であるGPIFは、外貨での為替リスクをかなり意識した反対取引としての償還資金を円に転換(円転)するなど、外貨調達と同時、または機に応じて実行するとしています。
外貨で株式、債券で運用する場合は、為替リスクを意識することになるということを認識するべきでしょう。そして今後数年はそのリスクがかなり高く、円高傾向の為替相場が長続きすると予測します。
金相場
市場環境は目まぐるしく変化していますが、そんな中でもリスク回避環境に著しく反応する金融商品、そしてリスク回避市場の影響を受けにくい金融商品もあるのです。
リスク回避の市場で投資家が向かうのが金相場で、金利を生まないが、何が起きても換金が可能と言う特性を持っています。
2001年のニューヨークでの同時多発テロ事件、リーマンショック時には金に退避資金を預ける投資行動が見られました。しかし、リスクが減退すると金相場から、リスク商品つまり株式市場に資金が戻る動きをしました。
一般投資家にはどうしても金相場に大きな資金を移すという行動は難しいのではないかと思います。
不動産投資信託
それでは何か上昇している金融商品はないのかと探したところ、東証REIT指数がこのグローバルな市場混乱の中、そして景気後退懸念の中で上昇していました。
REITとは、Real Estate Investment Trustの略称であり、不動産投資信託と訳されています。
海外では米国、オーストラリアの不動産投資信託が多く構成されて運用されていて、国内でも多くの不動産を組み込んだインデックスファンドがあります。そしてその代表例が東証REIT指数です。
日本の不動産、とりわけ、商業不動産、商業施設、物流倉庫など、景気にそんなに左右されなく為替リスクが少ない国内REITです。
中国資本が国内不動産を売却する動きも散見されるのですが、国内REITは堅調に推移しています。
下記グラフは東証リート指数の過去3年間の動きを示しています。
株式市場での日経平均が20,000円前後の水準にとどまっているのとは真逆の右肩上がりのチャートを示しています。上記で挙げた投資運用のカテゴリー金融商品として組み込むことも良いのではないでしょうか。
不動産ファンドでは、金利収入が概ね5%前後を得られるということも人気となっている理由のようです。クラウド商品にも不動産関連の商品もあるので一考に値するのではと思います。
筆者は現在の水準では購入するのを少し躊躇しますが、移動平均線を参考にして購入するのも良手ではないかと思います。チャート上では、13日移動平均線(赤)と26日移動平均線(青)を示しています。
新聞紙上にはある50を超えるREIT銘柄にはそれぞれ特色があり、皆さんに馴染みのある物件を組み込んだREITは、市場環境を読みやすく投資妙味があるのではないでしょうか。Entry(入口)とExit(出口)の機会も読みやすいのではないかと思います。
投資をしたことのある方には釈迦に説法のようですが、相場には必ずサイクルがあります。
資産運用
待機資金として資金を遊ばせておくことは避けたいと思う方もいるのかもしれません。どうしても投資、資産運用に資金を振り向けたいと考える方には、定期的に相場変動に関わらず一定の割合で株式などのリスク商品の購入を続けるのも策のようです。
株式市場は上昇と下降を繰り返しますが、海外リスク、為替変動の影響のない会社を選択し積み立てる感覚で資産を増やす行動です。長い目で見れば、平均的水準で購入できるのではないでしょうか。
筆者に経験はありませんが、一般には広く行われている投資運用の行動でありクラウド商品での積み立て運用も一つの手段ではないかと思います。
そして、皆さんの保有する運用可能資産の内の何割かの部分をこのような資産運用に回し、そしてその割合を絶対に超えないという意思を持つことも必要ではないかと思います。いわゆるポートフォリオ・マネージメントです。
理想的な割合は個人個人の意識の持ち方で違います。保守的に運用するのであれば、現在のような投資環境では待機資金比率を多くし、投資を控え、資産運用の割合を一定に保つことが必要です。
まとめ
皆さんあれこれと悩んでください。そうした環境にいることで、投資に対する成長を実感できるのではないかと思います。
投資の方針、ファンダメンタルズ分析、チャート分析、EntryとExit、投資心理の研究など、いろいろと試して勉強すると、きっと投資に入りたいという意識が高まりますよ。各種投資セミナーに参加することも良いでしょう。頑張りましょう!
«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。