ストロー廃止で何が変わる?マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題(前編)

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“災害”と言われるほど猛烈な暑さが続いている今夏。アイスコーヒーやジュースなど冷たいドリンクを飲むのにストローを使った人も多いことでしょう。

今、このストローが世界中で大問題になっていますね。
大手コーヒーチェーンのスターバックスは、現在利用しているプラスチック製のストローについて2020年までに使用をやめると発表しました。マクドナルドも英国やアイルランドの店舗でプラスチックストローの利用を段階的にやめ、紙製ストローを導入する方針です。
その理由は「マイクロプラスチック」と言われる微小のプラごみが海を汚染していることに起因するのですが、なぜストローばかりがこんなに注目を浴びているのでしょうか。マイクロプラスチックごみにかかわる問題について考えてみましょう。

マイクロプラスチックとは

初めに、「マイクロプラスチック」について、知っておく必要があります。
メイン画像のように、海岸に打ち寄せられた大量のプラスチック、缶、瓶などのごみを見たことがあるでしょうか? 私たちが日常使用しているレジ袋やペットボトル、バケツなどのプラスチック製品が海に流された場合、それらは紫外線や温度の差、波の動きや海水の塩分など、さまざまな影響を受けて劣化していきます。海洋で細かく砕け、やがて5ミリ以下の微小な粒となったプラスチックが「マイクロプラスチック」と呼ばれるものです。

さらに、歯磨き粉や洗顔料で研磨剤やスクラブ剤として使われている「マイクロビーズ」と呼ばれる製品もマイクロプラスチックです。つまり、私たちがそのような製品を利用するたびに、「マイクロプラスチックごみ」を排水口から海へ流していることになります。意外とこの点について知らない人も多いよう。私たちは知らず知らずのうちに、日常生活の中で「マイクロプラスチック」を排出しているようなのです。

回収困難。やがては生態系が崩れることに

大きな問題は、マイクロプラスチックは、自然界で分解されない点にあります。「マイクロプラスチックごみ」は小さくて細かく軽いために、海流に乗って世界中の海へ広がり漂うことになります。あまりにも微小であるがゆえ回収は困難であり、魚や海鳥が餌と間違えて食べてしまう事例が増えています。餌と間違えて食べた魚や海鳥は、内臓や消化管が傷つき死に至りますが、その連鎖が続けば、やがては生態系が崩れることになりかねません。しかも、このマイクロプラスチックに化学物質が付着している恐れがあり、食物連鎖によってさらに濃縮される可能性が指摘されているのです。

魚や貝を通じて人体に有害な汚染物質が蓄積すると危ぶまれているわけですが、現段階では汚染物質の摂取量が少ないため、顕著な影響はみられていません。ただ、今後、摂取量が増えた場合に、内分泌系や免疫系に異常をきたさないともいえず、未解明な部分が多いだけに注視していきたいところです。

日本の海も、マイクロプラスチックに汚染されている

世界経済フォーラムの報告書によると、世界のプラスチックの年間生産量は1964年では1500万トンでした。それが2014年には3億1100万トンと、わずか50年でその量は20倍超とになり、2050年には推計11億2400万トンに上ると想定されています。
このうち、少なくとも毎年800万トンが海に流れ出ている可能性があり、このままだと海の中のマイクロプラスチックごみの総重量は世界中の海にいる魚の重量を上回ると予測されています。

魚よりもごみの量のほうが多い海……、なんと恐ろしいことでしょうか。

日本の海域でも多くのマイクロプラスチックが見つかっています。環境省の調査では、日本海北部、東北地方の太平洋側、九州南部で特に多いことが判明しましたが、これは日本から流出したプラスチックごみだけではなく、近隣のアジアの国々から漂着したものも多く含まれていると考えられます。日本周辺の海域1平方キロあたりのマイクロプラスチック数は172万個であり、実に世界の27倍。日本の海はマイクロプラスチックに汚染されているのです。

さらに、マイクロプラスチックごみは海面に浮いたり、海中を漂ったりするだけではなく、海底にも多く沈んでいるとみられています。東京湾の海面に浮いているマイクロプラスチックが3個/平米に対して、東京湾の海底には6万個/平米が堆積しているというデータがありますが、研究者によって調査方法が違うため単純に比較できないのが実態です。将来的な調査手法の統一や標準化が期待されます。

全米の合言葉は「No straw, please.」

このような事態を踏まえ、欧米では数年前から対応に乗り出す国が増えています。

前述の通り、スターバックスやマクドナルドなどの企業がプラスチック製ストローを段階的に使用禁止とする動きを見せていますが、1年に5億本ものストローが廃棄されるといわれる米国での最近の合言葉は、“No straw, please.”。これまでドリンクと一緒に当然のようについてきたストローを断る活動が全米で拡大中です。

すでに、カリフォルニア州マリブ市では、今年2018年の6月1日から飲食店でのプラスチック製ストローの提供を禁止。また、シアトル市では今年7月1日から、プラスチック製ストローだけでなく、ナイフ、フォーク、スプーンなどのプラスチック製カトラリーの提供を禁止しています。
スターバックスが本社を置くシアトルは、特にこの運動のイニシアチブをとってきており、レジ袋や使い捨てプラスチック食器などの削減や廃止を目標としてきました。スターバックスがいち早く対応したのも当然かもしれません。

環境問題に一石を投じたのはSNS

スターバックスでは、プラスチック製のストローを廃止したのち、ストローがなくても飲める形状のふたを使う、としています。なぜストローばかりに注目が集まるのでしょうか。

プラスチック製のストローを廃止する理由は、大きく2つあります。
●ひとつは細長く小さい形状から、ストローはリサイクルされずにゴミ箱に捨てられることが多いから。
●もうひとつは、医療的に必要な人を除けば、ストローがなくても飲めるため、ストローをなくしてもあまり困らないから、です。

この2点から、ストロー廃止の議論が進んでいるのですが、世の中に決定的なストロー廃止を訴えたのは、ストローを鼻に詰まらせたウミガメの動画でした。絶滅危惧種でもあるウミガメの鼻に詰まってしまった10センチほどのストロー片。取り出すのに8分近くもかかり、その間苦しむウミガメの姿は涙なくしては見られないほど……。この動画は衝撃とともに世界中の人々にとらえられ、瞬く間にSNSで拡散されました。海の汚染が招く現実を突きつけられたと言えるでしょう。

今年6月には、重さ8キロにもなるレジ袋を飲み込んで餓死したクジラがタイで見つかり、ウミガメ同様、大きな話題になりました。タイは世界的にもレジ袋の利用が多い国とされ、この悲報をきっかけにレジ袋の利用を見直す動きが出てきたといいます。生物学者がレジ袋有料化などの対策を提唱したことに続き、タイの関係省庁や自治体、企業などの約20団体は、2027年までにプラスチック廃棄物の半減を目指す覚書に調印したということです。

── 各国や街の対応が進んできたことはわかります。では、私たちの国、日本はどうなのでしょうか。紙製ストローは今後普及するのでしょうか。そもそも、マイクロプラスチックごみをなくすために、私たちはどうしたらよいのでしょうか。
引き続き、後編でマイクロプラスチックごみの問題について考えてみたいと思います。

参考URL:朝日新聞、ほか

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。

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