iDeCo(イデコ)が法改正。年単位拠出のメリット・デメリットとは?
「iDeCo/イデコ」の愛称も定着した「個人型確定拠出年金」。
イデコとは、自分で株や債権を運用しながら、将来的に年金として受け取ることを目的とした老後のための資産形成制度ですが、2017年から加入対象が拡大したことで一気に注目され、大きな話題となりました。そして今年に入り、新たな法改正によって年単位での積み立てが可能になり、さらに関心が高まっています。そんなイデコについて、今回はお届けします。
イデコの特徴は、3つの税制優遇
イデコは自分で決めた拠出額を60歳まで積み立てながら、自分で投資信託や保険商品を運用し、最終的に年金として受け取る制度のこと。これまで加入対象ではなかった公務員や専業主婦なども加入できるようになり、加入者は71万人を超える急拡大を成し遂げています。
この制度の最大のメリットは、以下の「大きな税制優遇」と言われています。
【1】掛け金は「全額所得控除」の対象
【2】運用益も「非課税」
【3】受け取るとき「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象
【1】の場合、たとえば年収500万円で所得税率10%(住民税率10%)の人が、月2万円×12カ月を積み立てると、節税メリットは4万8000円分に。積み立て預金をしても1円も戻ってこないことを考えると、税制優遇による戻りは大きいといえるでしょう。
また【2】の運用益についても、非課税のものとしてNISAやつみたてNISAがありますが、運用期間が違います。NISAは5年、つみたてNISAは20年ですが、イデコの運用期間は加入から60歳まで(10年延長可能)で、途中で引き出すことは原則できない仕組みになっています。これを確実な資産形成ととらえるか、デメリットととらえるかは、ライフプランのあり方にもかかわってくるので、しっかりとした検討・見極めが必要です。
ただし、運用期間中の投資銘柄の入れ替えなど自由な運用ができたり、運用の休止・再開、(年1回ですが)限度額の設定変更は可能なので、つみたてNISAとの併用も含め、資産づくりの方法として大いに検討する価値があるといえるでしょう。
任意の月にまとめて拠出が可能に
掛け金の全額所得控除が大きなメリットのイデコですが、その掛け金には下限と上限があります。
●下限は5000円/月
●上限は公務員の場合は1万2000円/月
●専業主婦の場合は2万3000円/月
※会社員は企業年金があるかないか、その種類によっても変わります。
そして2018年からの変化の大きな特色は、これまで掛け金が月5000円以上、1000円単位で設定されていたものが、任意の月にまとめて拠出できるようになった点にあります。
たとえば月2 万3000円×12カ月=年27万6000円が上限額だった人が、これまで月に1万円ずつ積み立てをしていたとします。ここで新たな制度を組み合わせて利用すれば、毎月1万円の積み立てにプラスして上限までの残り15万6000円を、ボーナス時や年末調整の還付金がある12月に、上乗せして積み立てることも可能になるわけです。
こうした月々の支払いだけでなく、年1回払い、年2回、年6回払いなどさまざまな積み立て方ができるようになったので、1年の収支を考えて柔軟に積み立てプランを組めるようになったわけですが、ただし下限額については月5000円×月数分(年1回なら6万円、年2回なら3万円)の下限額以上を納付しなければなりません。
年払いにするメリットは、国民年金基金連合会へ納める収納手数料にもあります。月払いでは、毎月103円の収納手数料の納付が必須ですが、これは掛け金の収納に対する手数料にあたるもの。年1回払いになれば103円×1回の支払いで済みます。
年1回拠出は、高値づかみの恐れも
では、月単位を年単位にした場合のデメリットは何でしょうか。
月1回の定額拠出の場合の大きなメリットは、ドルコスト平均法が生かせること。これは、相場が安いときには多く購入でき、高いときには少量の購入ですむため、平均の取得価格を引き下げる効果があります。
年1回の購入であれば、高値づかみの可能性は避けられません。長期運用というイデコの特性を考えれば、月々の積み立てが相対的に安定的といえます。さらに、イデコの年払いは前払いではなく後払い。非課税運用による複利効果を考えるなら、月単位のほうがメリットはあります。
ただし、先に述べたように掛け金の所得控除の優遇を考えると、上限額をいかに使い切るかを総合的に考えながら積み立て方法を選択するとよいでしょう。なお、掛け金を年単位で拠出する場合は「加入者月別掛金額登録・変更届」の提出や、事前に拠出の年間計画を設定する必要があるので注意が必要です。
ちなみに、イデコの運営管理機関への手数料については月額400〜500円が主流でしたが、金融機関によっては無料化の動きも出ているので、加入しやすい条件が広がっているといえます。
── 公的年金が先行き不透明ななか、老後のための資産をいかに形成していくか……。これは多くの人にとって必要不可欠といえる命題ですが、イデコはその一つとして注目すべき制度。とはいえ、自分で運用する以上はリスクがついてまわることも認識し、金融商品の特徴を勉強することも忘れてはならないでしょう。
≪記事作成ライター:ナカムラミユキ≫
石川県金沢市在住。広告制作会社にて、新聞広告を手がける。映画、舞台からメーカー、金融まで幅広い記事広告を担当。著名人インタビューや住宅関連、街歩きコラム、生活情報まで興味の赴くまま執筆しています。