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進化し続ける「道の駅」。町おこしから地域の核として期待される場所へ(後編)

「道の駅」の人気はうなぎのぼり。1993(平成5)年の創設から25年を迎える間に、1033駅が開設され、2017(平成29)年11月17日の時点では1134駅が登録されています(2駅は登録抹消)。

「道の駅」としての登録数は、一番多い年で81駅を数えたことも。ただ、あまりにも乱立したため、よく似た施設が増えてマンネリ化を招き、一時よりも来場者や売り上げが減ったのも事実のようです。利用者のニーズが多様化したこともあり、登録当初の“ドライブ時の休憩所と特産物の販売”といったスタイルが通用しなくなってしまったのです。
そこで、この状況を打破するべく、近年は「道の駅」を運営する側も町おこし的な発想から意識を変え、独自のコンセプトを打ち出すようになってきました。国土交通省では、全国モデルや重点的に支援する「道の駅」を選定しており、これからの「道の駅」は“地域の核”としての役割を担うことが期待されています。

「道の駅」はこれからどこへ向かうのか?

巨大な面積を誇り、敷地内に数多くのショップを揃える大型マーケット的な「道の駅」。
スポーツが楽しめ、陶芸やそば打ちなどの体験ができ、温泉やホテルがある「道の駅」。
農園で野菜の収穫体験ができ、家族や友人たちとプールで遊べる「道の駅」。
採れたての魚貝類を使った丼を提供し、ボート遊びや海水浴ができる「道の駅」。
おばあちゃんのお弁当やおふくろの味を売り出して人気を獲得し、高齢者の雇用を生む「道の駅」。
地場産の特産物を作り出し、加工し、販売して第六次産業化をはかる「道の駅」。
緊急時には観光客や地域住民の緊急避難機能を持ち、情報発信基地としても利用される「道の駅」。
外国人観光客が安心して楽しめ、ニーズにあったサービスを提供する「道の駅」。
町民が歩くことで「健幸」になれる先進予防型のまちづくりをめざす「道の駅」。
収穫祭や歌自慢、ダンスショーなどのさまざまなイベントを行う「道の駅」。
豊かな自然や景観、文学や歴史、グルメなどを有する「道の駅」をネットワーク化する「道の駅」……etc.
「道の駅」の紹介をちょっと書き連ねただけでもこんなになってしまいました……!
それほど、「道の駅」が提供し、また、求められるサービスが多岐にわたっていると言えるのではないでしょうか。
各「道の駅」では、独自に趣向をこらし集客に力を入れており、国土交通省でも「地域の拠点機能の強化」や「ネットワーク化」を重視することになってきました。「道の駅」自体が目的地となるために育成するべく、「開かれたプラットフォーム」である「道の駅」の特徴を生かして、関係省庁とも連携して施策を展開することとしたのです。


「特定テーマ型モデル」に認定された6つの「道の駅」

国土交通省は「特定テーマ型モデル」という部門で「道の駅」を認定しました。「道の駅」の質的向上に対して模範となる駅です。平成28年度、「住民サービス部門モデル」として選定された6駅とその選定理由を見てみましょう。

■道の駅「両神温泉薬師の湯」(埼玉県小鹿野町)/画像参照
地域福祉の拠点として位置づけし、高齢者が集まる生きがいづくりや交流の場を形成した。集落から高齢者の移動手段としてバスターミナルを整備した

■道の駅「桜の郷荘川」(岐阜県高山市)
住民の憩いの場や交流の場として機能し、地域住民の健康増進のため、温泉施設への無料送迎やスポーツフェスティバルなどの取り組みを実施し、まちづくり協議会への参画・連携を行った。

■道の駅「美山ふれあい広場」(京都府南丹市)

住民票や各証明の交付等の行政サービスや診療所などの福祉サービス等の機能・施設が集積し、住民自治組織が中心となって総合的な拠点を形成した。

■道の駅「鯉が窪」(岡山県新見市)
図書館や診療所等、多様な機能を集約したワンストップサービスを行い、デマンドバスの運行や宅配、安否確認サービスなど高齢者福祉サービスを提供した。

■道の駅「小豆島オリーブ公園」(香川県小豆島町)
福祉施策の中核として、介護予防教室や健康に関する講演会等の健康増進に資する取り組みを行い、オリーブ販売等による収益を福祉関連施設の運営に還元した。

■道の駅「酒谷」(宮崎県日南市)
郷土料理や特産品加工、そば打ち体験などの体験学習を通じて地域住民の交流の場を創出。弁当宅配、農産物の集荷代行等の高齢者の見守り活動を兼ねた地域福祉サービスを提供した。

選出条件は、『公共の福祉増進を目的とした地域住民へのサービス向上に資する取り組みを実施し、成果をあげているもの』です。地域住民の交流の場となり、高齢者福祉サービスとしてデマンドバスを運行したり、安否確認サービスを行うなど、地域に特化したことが評価されました。「道の駅」の売上に即結びつくものばかりではありませんが、これからの「道の駅」のあり方を示しているといえます。

最新認定は「地域交通拠点部門モデル」の7駅

2017(平成29)年11月22日には、「平成29年度 地域交通拠点部門モデル」が7駅、選定されました。全国各地の「道の駅」で交通拠点として模範となるものです。認定された「道の駅」は全国からの視察や講師の要請に対応するなどの、「道の駅」の質的向上に貢献する役割を担っています。


■道の駅「あしょろ銀河ホール21」(北海道足寄町)
■道の駅「上品の郷」(宮城県石巻市)
■道の駅「輪島」(石川県輪島市) ※メインで画像を使用しています
■道の駅「吉野路 黒滝」(奈良県黒滝村)
■道の駅「舞いロードIC千代田」(広島県北広島町)
■道の駅「虹の森公園まつの」(愛媛県松野町)
■道の駅「むなかた」(福岡県宗像市)

選定されたのは『中山間地域及びその周辺地域において、「道の駅」が公共交通モード間の接続拠点となり、接続機能向上の取組により地域住民の生活の足の確保に資する成果をあげているもの』です。接続機能向上の取組とは、バス停の上屋やベンチ、待合スペース、連絡通路などを指します。従来のバス停を「道の駅」の前に移動したり、路線バスとコミュニティバスの連携による乗り継ぎダイヤの調整、また、「道の駅」を起点として、将来の無人自動走行を見据えた電動カートの試験走行を実施しているところもあります。

高齢化や過疎化が進む中山間地域の活用を探るべく、国土交通省は完全自動運転の実証実験を全国13カ所の「道の駅」で行っています。実現にはまだまだ課題が多く、一番の問題は収益ですが、高いニーズに応えようと未来に向けて「道の駅」を拠点にした模索が進められています。

── 東日本大震災の際にも、「道の駅」は防災機能において威力を発揮しました。自衛隊、警察、消防などの支援部隊が「道の駅」の施設を拠点とし、物資の受渡場所として活用されただけでなく、緊急避難した人々の一時避難場所となりました。また、施設のモニターやファクシミリなどを利用した情報の提供に加え、近隣農家からの農産物の販売や、入浴施設の提供など、生活支援としての役割も果たしたのです。
高齢化が加速している日本において、「道の駅」が地域住民にとって経済・雇用の両面でますます必要な場所となり、観光客にとっても魅力あるおしゃれなドライブスポットとして、これからもさまざまな形で進化し続けていくことは間違いなさそうです。


≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。

【転載元】

日本クラウド証券株式会社https://crowdbank.jp
日本クラウド証券メディア マネセツ
https://manesetsu.jp


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