発展を遂げる「道の駅」。経済効果も高い「道の駅」の魅力とは?(前編)
ひと昔前、「道の駅」といえば、「ドライブ中のトイレ休憩に立ち寄るところ」「新鮮な野菜や果物が買えて便利」……そんなイメージでした。利用する側にとっては、目的とする場所に行く途中、あくまで“立ち寄る場所”というコンセプトです。
ところが最近では、わざわざ「道の駅」を目指して行く人が増えています。「道の駅」を運営する側も、変わりゆく利用者の多彩なニーズを取り入れ、個性豊かなサービスを提供することで、高い経済効果を生み出すようになってきました。近年では、企画段階から“地域の核”となる場所として官民一体で検討され、国土交通省では、全国モデルや重点的に支援する「道の駅」を選定しています。
これほどまでに充実し、発展し続ける「道の駅」の魅力はどこにあるのでしょうか。
「道の駅」の登録条件とは
「道の駅」は1993(平成5)年に創設された制度で、当初の登録は全国で103駅でした。道路利用者への安全で快適な道路交通環境の提供、そして、地域の振興に寄与することを目的として、各地で登録・整備され、親しまれています。
「道の駅」として登録される要件は次の通りで、災害時には防災機能を発現することが想定されています。
■休憩機能
・駐車場:利用者が無料で24時間利用できる十分な容量を持った駐車場
・トイレ:利用者が無料で24時間利用できる清潔なトイレ、障がい者用も設置
■情報発信機能
・道路および地域に関する情報を提供(道路情報、地域の観光情報、緊急医療情報等)
■地域連携機能
・文化教養施設、観光レクリエーション施設などの地域振興施設
■設置者
・市町村、または市町村に代わり得る公的な団体
■その他配慮事項
・施設および施設間を結ぶ主要経路のバリアフリー化
これらの条件をすべて満たして、「道の駅」として登録されるのですが、忘れてはならないことがあります。
・各地域の文化や歴史、名所などの情報を活用し、魅力ある個性豊かなにぎわいの場を提供すること
・その地域にとっても活力ある地域づくりに寄与できること
つまり、利用する側、運営する側の双方に効果が期待されているのです。
「道の駅」の充実ぶりはすさまじく、2017(平成29)年11月17日の時点で、1134駅が登録されています。
全国モデルとなる「道の駅」が選定されている
国土交通省は2014(平成26)年に「全国モデル」を6駅選定しました。地域活性化の拠点として、特に優れた機能を継続的に発揮している「道の駅」を認めたのです。模範としてその成果を広く周知するとともに、さらなる機能を発揮することを重点的に支援することとなりました。モデルとなった6駅と選定理由は次の通りです。
全国で1000以上ある「道の駅」から選定された、わずか6駅ですから、いずれの「道の駅」も粒揃いと言えるでしょう。地元の特性を生かした商品やサービスを提供して、来場者から抜群の人気を集めているうえで、国土交通省の厳しい審査をクリアしたわけです。
例えば、群馬県の川場村は人口減少により過疎化地域に指定されていましたが、「農業プラス観光」の地域づくりが功を奏し、年間120万人が訪れる有数の「道の駅」となりました。出荷しているコメの作付面積の増加や雇用率も上昇しています。売上高は公表されていませんが、大手コンビニチェーン並みの規模といわれ、地元への大きな経済効果があるといわれています。
人気の秘密はどこにある?
同じく2014(平成26)年には、今後の重点的な支援で効果的な取り組みが期待できる「道の駅」が「重点」として35駅選定されました。前述のモデルとなった6駅が、10年以上も優れた機能を継続して発揮しているのに対し、「重点」は継続性が足りないものの期待できる、という位置づけです。そのうちの2駅を見てみましょう。
■道の駅 あらい(新潟県妙高市)
25億円を超え、総売上高日本一として、マスコミにも取り上げられた「道の駅」で、広大な敷地には数多くの飲食店に、ホテルまで完備されています。国道だけでなく高速道路にも隣接している立地のよさから、来場者の多くは県外からやってくる人気の「道の駅」なのだそう。
ちなみに、「道の駅 あらい」の重点選定理由は「売上高」ではありません。「駐車場立体化によるスノーシェルターやメガソーラーとEV車を活用した災害時の電力供給など、防災拠点」となっています。豪雪地帯における環境・観光に配慮した防災拠点としての役割が大きく認められたといえます。
■道の駅 発酵の里こうざき(千葉県神崎町)
2015(平成27)年4月にオープンした「道の駅」で、営業を開始する前に重点に選定されました。選定理由は「町の資産の発酵文化を道の駅を核として世界に発信。圏央道と国道の両方からアクセスできるゲートウェイ」です。
「道の駅」といえば、地元の特産物を取りそろえているのが一般的ですが、ここでは昔から町に根付いていた酒や味噌、醤油といった発酵文化を特長として前面に押し出しました。地元の伝統を紹介しつつ“発酵”に特化した「道の駅」をつくり上げたのです。店内には全国各地から集めた約600種類もの発酵食品が並び、立地のよさも相まって年間約65万人が入場する人気の「道の駅」に。珍しいものを求めて人が集まり、売り上げは6億円を超えるともいわれます。
「重点」に選定されたことと「売上」や「人気」は関係があるのでしょうか。
必ずしも関係があるとは言えませんが、少なくとも選定される「道の駅」には、それなりの企画力や集客力があり、人々から魅力的に映る工夫をしているといえそうですね。
── 北海道開発局の発表によると、2012(平成24)年度での北海道内の「道の駅」の経済効果は268億円という試算でした。(当時の北海道の「道の駅」は114駅)。札幌市内の大手デパート1店舗の売上に匹敵するのだとか。利用者数が3千万人を超え、雇用効果もあるなど、「道の駅」の影響はいかに大きいかがよくわかります。
後編では、道の駅に期待される役割や、「特定テーマ型モデル」に選定された「道の駅」をご紹介します。
≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。
【転載元】
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