2018年にスタートする「つみたてNISA」と「iDeCo」の違いとは?
前回は、新しい非課税投資信託「つみたてNISA」について解説したが、非常に似た節税投資術として、iDeCo(確定拠出年金)なるものがある。
「イデコ」の名前を耳にした方も多いことだろう。
コツコツ積み立てて運用益を得る、しかも税金がかからない点では「つみたてNISA」と似ているが、ではいったい何がどう違うのだろうか。さらに、どちらを選べばよりメリットがあるのだろうか。
今回はその点について考えてみよう。
そもそも、iDeCoっていったい何?
「iDeCo」を端的に言うと、個人型の確定拠出年金のこと。
この制度自体はすでに10年以上前からあるのだが、個人型プランの加入対象者が2017年1月からすべての企業の従業員、専業主婦や公務員にまで拡がったことで、一気に注目を浴びるようになった。
iDeCoでは、証券会社や自分が勤務する会社を通して加入し、毎月掛け金を拠出(積み立て)する。民間企業の会社員なら最高で月に2万3000円まで。自営業なら最高で月に6万8000円まで積み立てることができる。
この制度の最大の特徴は、拠出金が全額所得控除の対象となり、また、運用益も非課税である点。
こうした点から所得税や住民税がかなり安くなり、たとえ投資信託などの運用で大きな利益が出なくても、毎年の所得税や地方税などが減税になるため、結果的に運用益が出ていることと同じことになる。少なくとも定期預金として眠らせておくより、得られる金額が大きいことは確かだ。
ただし、サラリーマンや自営業者の公的年金が年々先細りするなか、この制度はその補てんを目的にと行政がもくろんだものでもある。よって、いったん積み立てを始めると途中解約はできず、60歳まで引き出すことができない(図1「iDeCo(個人型確定拠出年金)のポイント」参照)。
つまり、資金の流動性の観点からは最悪な商品といえるので、いつまとまったお金が必要となるかわからない子育て世代などは、無理して資金をつぎ込むのは考えものだ。なにしろ「個人型の確定拠出年金」の名前通り老後の資金なので、当面使う予定のないお金や、余裕があるお金を少しずつ積み立てるのが、この制度を利用するコツのようだ。
iDeCoと、つみたてNISAをセットにした運用も!
iDeCo】には節税対策としての高いメリットがあるが、残念ながら60歳までは引き出せない。
【つみたてNISA】はいつでも資金を引き出せるが、税金対策としてはiDeCoほどではない。
上記の【iDeCo】【つみたてNISA】双方のメリット&デメリットを踏まえたうえで、ならばこの両者をセットにして運用するという方法もある。NISAとつみたてNISAは併用できないが、iDeCoとつみたてNISAは併用できるからだ。
たとえば、毎月拠出できる手元資金が「2万円」あったとしよう(図2「つみたてNISAとiDeCoの併用投資」参照)。そのうち1万円をiDeCoに(あるいは安全を期して銀行の定期預金に拠出してもよいだろう。それでも所得税の控除などでメリットが出てくる)。一方のつみたてNISAにも1万円を。つみたてNISAはあくまでも運用益に対して非課税なので、投資として少しでも価値ある商品に拠出するという考え方になる。
【動かない預金を引きずり出し、世の中の趨勢にこたえるために
「非課税投資信託「つみたてNISA」いよいよスタート!」の前回記事でも解説した通り、積み立て、長期、分散といったリスク回避の基本に関して、この二つの制度をうまく利用することでさらに徹底できるというわけだ。
いま国がもくろんでいるのは、「滞留しているお金を世の中にもっともっと流通させて活性化し、物価も引き上げて経済を循環させる」こと。そのためには、ずっと動かないタンス預金や、眠ったままの銀行預金を引きずり出さなければならない。さらには、かつて経験したことのない超高齢化社会の到来で、年金の資金は先細りする一方だ。このままいけば、年金の支給開始年齢もまた上がる可能性さえある。
こうした世の中の趨勢にこたえるかたちで、つみたてNISAやiDeCoなどの新制度が国の主導で次々発表されている。子育て世代にとっても、老後に不安を持つ人たちにとっても、大事な元手を少しでも増やす手立てを、しっかり考えなければならない時期にきているといえるだろう。
≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、この春退職。今後はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛ける予定。
【転載元】
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