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クルマは100年に一度の大転換期に!?──世界で加速するEVシフト《Part.1》

世界では今、ガソリン・ディーゼル車から電気自動車(以下・EV)へ移行する「EVシフト」が加速し、自動車業界は100年に一度といわれる大転換期を迎えようとしています。

近年、環境規制の強化に取り組む欧米・中国では、国が主導となってEV普及に向けた政策を推進。これを受けて大手自動車メーカーはEVの本格投入を次々と発表し、将来の市場シェア獲得に向けて早くも軸足を移し始めています。
世界で急速に広がるこの変化が、日本の自動車メーカーや産業構造にどのような地殻変動をもたらすのか……。欧米・中国・日本における最前線の動きを追いながら、2回シリーズで探っていきます。

欧米で強化される「ガソリン・ディーゼル車の販売規制」

2017年に入って、ヨーロッパ各国を中心にEVシフトの動きが活発化しています。

フランス・イギリスの政府は、2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止すると決定。同じく2025年までにガソリン・ディーゼル車の廃止を掲げるノルウェーとオランダでは、EVの税制優遇や充電スタンドの拡充などを積極的に推進。EV購入時の大幅な税金免除(25%の消費税+約100万円の購入税を免除)や、高速道路無料などの優遇策を導入したノルウェーでは、すでに新車販売の2割をEVが占めるまでになっています。

また、アメリカ各州(カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、コネチカット州、メイン州、ニュージャージー州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州、メリーランド州)でも、日米の大手自動車メーカー6社を対象に、排出ガスを出さない次世代車(※)の販売割合を14%以上に義務づける「ZEV規制」を導入。2018年からは販売割合が16%以上に引き上げられ、対象メーカーも日・米・韓・独の12社に拡大されるなど、規制基準がさらに厳格化されます。
※EV(電気自動車)、FCV(水素を使った燃料電池車)、PHV(プラグインハイブリッド車)が対象


独VWに続いてEV強化の戦略に出た欧米自動車メーカー

こうした流れにいち早く呼応したのが、2015年にディーゼル車の排ガス不正が発覚した独フォルクスワーゲン(VW)です。主力車種の不正問題で窮地に立った同社は、2兆6千億円の開発資金を投じ、2025年までに50車種以上のEV導入を目指すと発表しました。大胆なEV転換で起死回生を狙う野心的な目標に、国内外の業界からも驚きの声が上がっています。

本気で巻き返しを図るVWに触発され、他の大手自動車メーカーもEV強化の戦略を打ち出しています。独メルセデスベンツとBMWは、急ピッチでEVの量産体制を確立させ、人気車種の完全EVモデルを2020年までに販売すると公表しました。環境立国であるスウェーデンのボルボカーズも、2019年以降に発売する全車種にエレクトリックモーターを搭載し、電動化を将来の事業の主軸に据えると宣言しています。

さらに、EVブームの立役者となった米テスラも、従来の高級路線となるハイグレードなEVに加え、価格を3万5千ドル程度に抑えた普及型モデルの販売を開始。富裕層にとどまらない顧客層を取り込むことで、受注は約50万台に達したと言われています。

国を挙げたEVシフトで、自動車大国を狙う中国

欧米と並んでEVシフトに突き進んでいるのが、世界最大の自動車市場・中国です。年々深刻化する都市部の大気汚染の切り札として、国策で新エネルギー車(NEV)の普及を後押ししているのです。

その一環として、中国政府はさまざまな優遇政策や規制を導入しています。例えば……
◆国内の自動車関連メーカーに補助金を出してNEVの技術開発を支援。
◆2019年から、国内の自動車メーカーが生産する乗用車の一定割合をNEVにすることを義務化。
◆2018年までに自由貿易区内でNEVを生産する場合、外資の経営権規制を試験的に解除(外資を呼び込むことで国内メーカーの競争力・技術力を高める)。
◆現在、ガソリン車の購入が政府によって制限されている都市部でも、NEVであれば優先的に購入できる。

中国政府がこうした政策を進める背景には、世界トップクラスの自動車産業を築くという狙いもあります。ガソリン車やハイブリッド車では欧米・日本に立ち遅れたものの、同じスタートラインに立ったNEVのカテゴリーであれば、世界レベルの勝負も十分可能だと見ているのです。日・米・独をしのぐ自動車大国を目指して、国家×企業による壮大なチャレンジがすでに始まっています。

中国のEVシフトをリードする大手電気自動車メーカー「BYD」

そんな中国のEVシフトをけん引しているのが、広東省・深セン市に本社を置く電気自動車メーカー「BYD(比亜迪汽車)」です。

同社は1995年、携帯電話のバッテリーを手がけるベンチャー企業としてスタート。
その後、公共交通機関の電動化を進める政策のもと、深セン市の電動バス生産などで実績を積み、1回の充電で400kmまで走行できる世界トップレベルの高性能バッテリーも開発しました。現在は乗用車やタクシーなど多彩な車種を展開し、中国国内でNEVの販売台数トップを誇る大企業に成長しました。

国を挙げてEVシフトが進む中、2017年11月に開催された「広州モーターショー」でも、市場をリードする地元のBYDが大きな存在感を示しました。BYDの代表はショーの中で、2018年のNEVの販売目標を20万台に据えると発表。これは、中国で2016年に販売されたNEV(約34万台)の半数を超えるマクロな規模です。さらに、国内外の販売・サービス網を400都市に倍増し、3万拠点の充電スタンドを独自に設けるという目標も掲げました。
高性能なNEVの生産に加え、その普及に向けたインフラ整備のビジネスにも乗り出すBYDに、いま世界中の自動車メーカーから大きな注目が集まっています。

── 次回《Part.2》では、EVシフトを見据えた日本の自動車メーカーの動向とともに、「EVショック」と呼ばれる自動車業界への衝撃や産業構造の変革について取り上げます。

※参考/NHKクローズアップ現代、朝日新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。

【転載元】
日本クラウド証券株式会社
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