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吉崎誠二の「データで読み解く、不動産市況のいま⑤ 」【マンション価格は、まだ上がるのか?ここ5年でどのくらい上昇したのか?】

(写真DrimaFilm /Shutterstock)

「いま、マンションは買い時ですかね?」 友人や知人などとお酒を飲んでいると、よくこんな相談をされます。「マンション価格はかなり高くなっているけれど、景気もいい感じで、金利も低いし、買い頃かな」というお考えのようです。
確かに、いま買い時か?を判断するのが悩ましい時期だと言えます。
マンション価格は、2012年以降右肩上がりに上昇していますが、一方金利は低水準です。マンション価格このまま上がり続けるのか?金利はいつまで低水準なのか?このあたりの読みがポイントになってくるようです。

右肩あがりの首都圏マンション価格

マンション価格の水準については、中古マンション価格のデータと新築マンション価格のデータの2パターンあります。水準だけを見るには、中古マンション価格の方が市場性を反映しやすく、分かりやすいと言えます。首都圏の中古マンション価格は、2012年の終わりごろから上昇基調になりました。リーマンショック後、大きく落ち込んだ価格がこのころから上昇に転じました。

図1は近年の首都圏における中古マンション価格の推移を示したものです。これを見れば、2012年秋頃から上昇を続けていることが分かります。2017年5月との比較では、㎡あたり約13万円程度の上昇で、ファミリー向けとして一般的な70㎡に換算すると、900万円超の値上がりとなっています。価格は概ね、1.35倍となっています。
首都圏全体でこの水準ですから、都心の人気エリアではこれ以上の値上がりとなっています。なかには、平米単価で30万円を超えるエリアも散見されます。70㎡に換算すると2100万円の値上がりです。(坪単価450万円→550万円のイメージです)

図2は首都圏における新築マンションの成約と単価の推移です。右図の㎡単価は中古マンションのように、右肩上がり一直線という感じではありませんが、上下の動きはあるものの傾向としては、確実に上昇基調といえます。その傾向は2014年以降より鮮明となってきました。

右肩あがりの近畿圏マンション価格

次に、近畿エリアの状況はどうでしょうか?

図3は2011年以降の近畿エリアの中古マンションの成約単価です。
こちらも、2012年の秋ごろからの上昇基調が鮮明です。しかし、首都圏ほどの上昇ではありません。価格は概ね1.25倍、㎡単価で6万円程度、70㎡に換算すると400万円超の値上がりです。

首都圏ほどの熱狂ぶりはありませんが、近畿圏でも大幅に上昇しています。近畿圏の場合、エリアにおける不動産市況の格差がかなりありますので、さほど値段の上がっていないエリアもあれば、京都市内や大阪市中心部のように、大幅に上昇しているエリアもあります。特に、京都市内では東京の人気エリアに匹敵する熱狂ぶりのようです。

貸し出し金利はどれほど、低水準か?

次に、金利について見てみましょう。

図4は、国債の金利や金融機関の各種貸し出し金利の推移を示したものです。貸出金利については公表資料を基にグラフを作成しています。実際の貸出金利は、優遇金利を適用していることがほとんどですので、このグラフ上の数字よりもかなり低いことが一般的です。

図4をみると、マイナス金利政策や日銀による国債の大量購入の影響で、2016年の上期に大きく金利が低下した様子が伺えます。2016年の後半から金利は上昇に転じますが、しかし上昇は僅かな幅にとどまり、その後は横ばいといった状況です。


これまで見たように、マンション価格はここ5年でかなり上昇していますが、低金利のポジティブな影響下で、マンション価格は高止まりしている、という状況です。

2017年後半、2018年前半のマンション価格、金利の予想

では、これからのマンション価格はどうなるのでしょうか?
すでに、都心の高額の中古マンションの値段は頭打ち感が出てきており、チラシなどでは長期に売り出している物件等において「新価格」、あるいは「価格改定」という物件も増えてきました。
また、(財)日本不動産研究所が毎月出している「不動研住宅価格指数」も5月以降、3カ月連続の低下(最新データは7月)となっており、僅かずつですが、値下がり基調になっています。
さらに、公募価格(売り出し価格)と成約価格との乖離の幅が大きくなってきているというデータもあります。一般的に中古物件の場合、価格交渉(指値~成約)を行い、公募価格よりも低い価格での契約となりますが、例えば、チラシはサイトでは10000万円となっている物件が、これまでは9500万程度で成約していたのが9000万円で成約しているといったイメージです。

こうした状況から、中古マンション価格はこの先も高額物件を中心に価格は下がる基調にあると予想されます。しかし、一部超人気エリアの、希少物件などはこの限りにあらず、かもしれません。

一方、金利ですが、日銀の低金利政策あるいは国債購入は続けると先ごろ発表したばかりですので、少なくとも現在の体制(黒田総裁)の中では、多少の上下はあると思いますが、低金利の水準が続くものと思われます。


吉崎 誠二
不動産エコノミスト 社団法人 住宅・不動産研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。著書:「データで読み解く 賃貸住宅経営の極意」(2016年2月)「2020年 大激震の住宅不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを買える人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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