いま、あらためて注目される「金(ゴールド)投資」のイロハ《Part1》
2016年1月、日本銀行がマイナス金利の導入を発表したことで、主要銀行の普通預金の金利が0.001%にまで引き下げられました。
これは「100万円を銀行に預けても、1年につく利息は10円」ということ。かつてない超低金利時代を迎え、一般消費者の意識は「資産運用」から「資産防衛」へシフトする動きもあるようです。
そうした中、他の金融商品とは一線を画し、堅調な伸びを見せているのが「金(ゴールド)投資」です。投資リスクを回避する安全資産として、いまあらためて注目されている「金」。知っているようで知らない金投資のマーケットについて、2回に分けて詳しく見ていくことにしましょう。
経済危機のリスク回避に「有事の金」
昔から「有事の金」といわれるように、金の価格は政治・経済状態が不安定な時に上昇する傾向があります。また、金自体は株や債権、通貨のように発行主体がなく、現物(金そのもの)に価値が存在します。そのため、不測の事態が起きても価値がゼロになることはなく、世界で通用する無国籍な代替通貨として、いつでもどこの市場でも換金することが可能です。
そんな実物資産としての金の価値は、近年の世界経済の低迷や金融危機の中でも、さらに存在感を増しています。2015年に中国ショック(人民元の切り下げで市場が混乱)が起きた中国では、資産形成を目的とした金の民間需要が急増。世界各国の中央銀行や公的機関でも、万が一の戦争やテロ、恐慌などに備えたリスクヘッジとして相当量の金を保有しています(図参照)。
世界経済が低迷する一方で、現在、アメリカでは景気の拡大が続き、金利は上昇傾向にあります。しかし、トランプ新政権や英国のEU離脱決定などの先行き不透明感から、米投資家の間でもリスク回避のために米ドルやユーロを売って、金を保有する動きが広まっています。
その点では、米本国としてもぬかりはありません。図のランキングにもあるように、アメリカ中央銀行の金の保有量は世界ナンバーワン! しかも、2位のドイツをはるかに凌ぐ8000トン超! 好景気でもしっかりと蓄えているあたりは、さすが経済大国アメリカですね。
需要拡大を受けて金価格は堅調に推移。将来的には……?
さらに、金には実物資産や投資商品としての価値だけでなく、工業製品としても重要な役割を担っています。たとえば、スマートフォンやパソコン、家電や医療機器など、ほとんどの電子機器の半導体には金が使われており、工業製品に不可欠なレアメタルとして年々ニーズが高まっています。これらの機器に使われている金は、有用な「都市鉱山」のひとつとして回収・リサイクル化が進み、2020年東京五輪の金メダルの材料にも使われるそうです。
こうした世界規模の需要拡大を受けて、ここ10年の金価格は上昇傾向で堅調に推移(下図参照)。需要が増加する一方で採掘量は減少傾向にあるため、今後も価格が暴落する可能性は低いとみられています。
ちなみに、現在、世界で1年間に採掘される金の量は約2500トン。地中に残る採掘可能な金の埋蔵量は、あと7万6000トンほどとみられています。そのため数十年後には採掘できる金が枯渇して、リサイクルでしか供給できなくなる可能性も指摘されています。そうなれば、市場に出まわる金の希少性はさらに高まり、価格の上昇に拍車がかかることは間違いありません。
今後、夢の「錬金術」なるものが実現しないかぎり、その価値は半永久的に失われることはないのです。
── 以上、金市場の特性や動向について見てきましたが、次回は金投資の方法や投資する際の注意ポイントなど、より実践的なアプローチに迫ってみたいと思います。
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。
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