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吉崎誠二の「データで読み解く、不動産市況のいま③」【ユニバーサルスタジオジャパンの入場者数と不動産価格の不思議な関係】

(写真=: jannoon028/Shutterstock)

日本一のテーマパークである東京ディズニーランドと不動産価格の関係について「データで読み解く、不動産市況のいま ①」の回では、分析してみました。かつてテーマパークは日本各地に誕生しましたが、現在話題に上っている勢いのあるテーマパークと言えば、他に大阪にあるユニバーサルスタジオジャパン、そしてHISが本格テコ入れして復活したハウステンボスくらいでしょうか。今回は、日本で2番目の来場者数を誇るユニバーサルスタジオジャパンと大阪の不動産価格の関係について考えてみます。


大阪駅から電車で約10分。
大阪港の沖合の埋め立て地にユニバーサルスタジオ(以下USJ)はあります。
USJは2001年にオープンしました。東京ディズニーランド(以下TDL)の開園が1983年ですので、その18年後ということになります。USJの2016年の入園者数は1460万人、東京ディズニーランドの入園者数が同年約3000万人ですので、約半分の入場者ですが、一時期入場者数の低迷が言われていましたが、ここ10年はずいぶん増えてきています。

テーマパークへの来園者は、かなり広範囲に及びます。TDLへは、日本各地はもちろん中国、台湾、韓国など、アジア各国からの来園者も多く見られます。日本各地からの来園という点ではUSJはTDLよりも少ないようですが、アジア各国からの来場者がかなりいるという点では、TDLもUSJも似た状況にあります。
USJは関西だけでなく国内での認知度もあがり、アジアからの関西へのインバウンドも多いという追い風を受けて、入場者数を伸ばしています。


USJの入場者数は、公式的には発表していないようですが、いくつかの報道機関やその他情報からまとめると、上の図のようになります。(公式データでない点は、ご了承ください)
図を見ると、2010年ごろから来場者数が急に伸びている様子が分かります。オープン初年の数字を中々超えることができませんでしたが、2013年にはオープン以来の1000万人を突破、2014年には1270万人となり、初年2001年の1100万人を超えました。そして、昨年2016年は1460万人となり、2010年以降、7年連続で増加しています。

さて、この間の大阪の不動産価格はどうだったでしょう。
ここでは、値動きが分かりやすい中古マンションの価格を取り上げてみます。
大阪のマンション価格は、2013年から上昇に転じます。東京のマンション価格上昇が2012年からだったことを考えると、1年遅れでの上昇です。

2012年の平米単価が24.6万円、2016年が31.7万円ですので、この間に28.7%上昇しています。一般的な3LDKのマンションは70㎡程度ですので、これに換算すると、約500万円値上がりしたことになります。
ちなみに、近畿圏全体の中古マンション価格を見てみると、2012年の平米単価は24.3万円、2016年が29.5万円、この間に21.4%値上がりしています。70㎡換算では、360万円の値上がりということになります。大阪ほどではありませんが、近畿圏でもマンション価格は近年値上がりしています。

それでは、このマンション価格とUSJの入場者数の推移を重ねてみましょう。

図3は、2010年から2016年までの推移を示しています。左軸:USJ入場者(万人)、右軸大阪府の中古マンションの㎡単価(万円)です。

これら2つの相関係数は、グラフをみれば一目瞭然ですが、0.94と極めて高い値となりました。相関係数は0.7を超えればとても強い相関ということになりますので、0.94というのは、ほぼ同じような動きをすると言っても過言ではありません。また、近畿圏全体の中古マンション価格との相関では、0.95となっており、さらに強い相関関係が見られました。

ちなみに、ディズニーランドの入園者と首都圏中古マンションの関係は、0.72でしたので(前回掲載記事のアドレスの表示)、それよりも強い相関関係にあると言えます。

このような強い関係はいつまで続くのでしょうか?
たまたまの一致なのか?それとも、不動産価格の上昇は、テーマパークの来場者の増加をもたらすのか?
これだけの、分析でははっきりした要因はわかりませんが、どうも不思議な関係があるように思えます。

吉崎 誠二
不動産エコノミスト 社団法人 住宅・不動産研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。著書:「データで読み解く 賃貸住宅経営の極意」(2016年2月)「2020年 大激震の住宅不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを買える人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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