吉崎誠二の「データで読み解く、不動産市況のいま ②」【不動産価格が上がると、海外へ旅行する人が増える?】

E19d7d44 06ea 4481 93f1 8c376056152b camera_alt (写真=Ann Haritonenko/Shutterstock.com)

今年のGWは天候に恵まれ、春の爽やかな日が続きました。5月1、2日を休みにすれば9連休となる日の並びにも恵まれて、遠出をされたかたも多いようです。GW中のニュースの定番である、高速道路の渋滞模様、そして成田空港での出国帰国ラッシュの様子。ぐったりとした表情の中にも休日を謳歌した方々が「〇〇へ行ってきました!」と楽しそうにインタビューに応えていました。

最近、海外から日本を訪れる方が増えています。東京や大阪といった大都市の街中、そして京都などの主要観光都市で、外国人旅行者の方を見ない日はありません。また、そんな海外からの旅行客をあてこんだ民泊(法律的にグレーな部分があるエリアもあります)を営む方も増えています。

外国人の訪日客数は、2013年から飛躍的に伸びました。

表を見ればお分かりのように、2014年―2015年は特に伸びが大きく1.5倍近い方が訪れました。

そして、2016年には2400万人を超え、2017年はさらに増える見込みとなっています。政府は2020年には4000万人、2030年には6000万人を目標にしています。もともと、2020年に2000万人だった目標は2016年には早々と超え、新たな大きな目標を掲げています。

国別の訪日本の数では、韓国が全体の3割近くを占めており、以下中国、台湾、香港、タイ、シンガポール・・とアジア各国が続きます。 距離が近く、航空路線も多く、日数・旅行費ともお手軽なのでしょう。近年の傾向では、実数は増えていますが、北米からの観光客が相対的に減り、アジア各国が相対的に増えているという状況です。

一方、日本からの出国状況はどうでしょうか?

日本人の海外旅行者の数はバブル期と呼ばれていた1980年代後半に大きく増えます。1986年に500万人を超え、1990年には1100万人となり初めて1000万人の大台を超えました。日本経済が絶頂な頃、日本の不動産価格が空前の高値を付けていた頃です。しかし、1990年~91年ごろにバブルは徐々に崩壊していきます。株価は早くも1990年から、不動産は1991年ごろから下落を始めます。しかし、海外を訪れる日本人の数は減りませんでした。1990年に1100万人を超えてからも1997年1680万人になるまで、ほぼ毎年右肩上がりで増え続けました。

2000年代に入ってからは、海外を訪れる日本人は大きく増えも減りもしていません。SAASがあった2003年には1329万人と大きく落ち込んだ以外はほとんど横ばいです。その後2005年~2008年の頃はミニバブルと呼ばれたころで、不動産価格は好転していましたが、海外を訪れる日本人はほとんど増えていません。一番多かったのは2012年の1849万人です。このころはリーマンショック後の不動産市況の大きな落ち込みからようやく回復のキザシが見え始めた頃で、アベノミクス前夜というころになります。
 ここまででは、不動産市況が良くなっても海外訪問する日本人旅行者の数が増えるという相関はほとんど見られていません。

では、2013年以降はどうでしょうか?不動産市況は2013年以降右肩上がりによくなって、不動産価格も大都市部を中心に大きく伸びています。有効求人倍率はバブル期を超える勢いです。

図表2のとおり、2012年をピークに2013年~2015年は3年連続の減少、2016年は多少回復するものの、1700万人を少し超えた程度に留まっています。ちなみに、2014‐2015年の間に海外から日本に来る外国人旅行者と、海外を訪れる日本人旅行者の数が逆転しています。

これは、為替相場が大きく影響していると思われます。

2012年は1ドル約80円(年平均)、2013年は約97.6円(同)、2014年は約106円(同)、2015年は約121円(同)と海外への旅行者がピークだった2012年の円高の凄さが伺えます。

日本人の場合、「株価が上がって儲けたから海外旅行に行こう」や「不動産価格が上がってきたからハワイに行こう!」という経済市況よりも、「円が強い今だから、海外旅行をしよう!」という現実的な感覚で行動を起こすのかもしれませんね。

吉崎 誠二
不動産エコノミスト 社団法人 住宅・不動産研究所 理事長 
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。著書:「データで読み解く 賃貸住宅経営の極意」(2016年2月)「2020年 大激震の住宅不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを買える人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/


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