殖やすより「守る」超富裕層の資産運用の考え方とは

A887900f 20ae 46fc 88f9 b89b4cc192e9 camera_alt (写真=varandah/Shutterstock.com)

アベノミクスの発動で、日本銀行は異次元の金融緩和を続けてきた。2016年1月には、マイナス金利を導入して日本経済のデフレ脱却を目指している。加えて、トランプ米大統領の誕生によって世界は混迷を極め、不透明感が増している。

そんな状況の中で、いま注目されているのが資産を増やすのではなく、資産の減少を防ぐための「資産防衛術」だ。一般の庶民にとって、運用とはあくまで資産を殖やすものであり、防衛するイメージは少ない。ところが、いわゆる「超富裕層」と呼ばれている人たちにとって、資産防衛は長年取り組んできたテーマである。そこで、今回は超富裕層の「殖やすよりも守る資産防衛術」について考えてみたい。

超富裕層とはどんな存在か

超富裕層と呼ばれるのは、どんな人々なのか。

富裕層の世界的な調査で知られるクレディ・スイスの「2016年度グローバル・ウエルス・レポート」によれば、いわゆる富裕層を意味する「ミリオネア」とは、資産総額100万米ドル(1ドル115円計算で1億1,500万円)超で、日本には282万6.000人いるという調査結果が出ている。米国に次ぐ世界第2位の多さだ。さらに、超富裕層と呼ばれるのが純資産5,000万米ドル(57億5,000万円)で、日本には3,600人存在し、世界第6位だそうだ。

こうした超富裕層はどうやって、自分の資産を守っているのか。超富裕層と言っても、企業経営者が多いのは事実だが、先祖代々の資産家、あるいは不動産投資や株式投資などで財を成した人もいるなど、財産をつくる過程は多様性に富んでいる。しかし、いったん手にした資産を守る方法というのは、ほぼ同じようなスタイルで資産防衛が図られている、と言って良いだろう。

日本のプライベートバンキングの現状

超富裕層が使う金融機関はプライベートバンキングと呼ばれるものである。プライベートバンキングの対象顧客は、富裕層というよりも、さらにその上を行く超富裕層がメイン顧客だ。最低預入資産も、プライベートバンキング発祥の地と言われるスイスでは、1,000万米ドル(11億5,000万円)程度が最低限と言われる。

プライベートバンキングでは、コンシェルジュと呼ばれる「バンカー」が、顧客ごとに担当者となって資産管理のみならず、相続税対策や事業継承、子供の教育機関の斡旋まで、手広く面倒を見てくれる。むろん、顧客の資産運用に対するスタンスを聞き取り調査して、その意向に従って、オーダーメイド型の資産運用を行ってくれることも強みだ。

プライベートバンキングには大きく分けて、飛行機の手配から、病院の手配、全寮制のこどもの学校の面倒まで幅広くみてくれるサービスを提供するスイス型、資産運用や管理に重点を置いている米国型の2種類がある。しかし、日本では法的に幅広い機能を持つプライベートバンキングが認可されていないため、海外から進出しているプライベートバンキングも、投資顧問業者として資産運用のアドバイスをする程度の存在になっているのが現実だ。

国際金融センターの強み

超富裕層と呼ばれる人々は、投資で成功した人など一部を除けば、自分で投資する運用商品を決めて銘柄選定する人は少ない。運用はその道のプロフェッショナルに任せるのが普通だが、前述のように日本ではあまり定着していない。

そこで、富裕層の多くはこうしたサービスが整っている海外の金融機関に口座を開設することになる。香港やシンガポールといった日本よりも税制面で有利な地域がクローズアップされて、これらの地域で営業している「HSBC」や「CITI」といった銀行が活用されているわけだ。ただ、香港やシンガポールが注目されるのは、単にタックスヘイブンの部分だけで超富裕層に注目されているわけではない。これらの地域が「国際金融センター」である点が注目されているからだ。

たとえば香港であれば、ファンドや債券などを販売する際に、中国語(広東語)と英語、両方の言語を使うことができる。こうした国際標準の仕組みが整っているかどうかが国際金融センターであるかの違いになる。日本のように日本語に翻訳して、いちいち認可を受ける必要がある仕組みは時間もコストもかかる。同じタイプのファンドでも、日本で販売すると思ったほど運用益は出てこない。日本特有の「ローカル・コスト」がかかるからだ。

超富裕層が資産防衛に走る理由

では、超富裕層はなぜ資産防衛に走るのか。その背景には、近年の不透明な経済環境の変化がある。マイナス金利が導入されて、日本銀行は毎年80兆円の国債と約6兆円のETFなどを買い続けている。制御不能の超円安や物価上昇が急に起こる可能性もゼロではない。超富裕層の多くは、現在の経済情勢は攻めの資産運用ではなく、資産防衛が急務であると考えているはずだ。加えて、予想不能なトランプ政権が出現したことで、世界情勢も読めない。

こうした不確実性の高い世の中では、超富裕層は高次元のリスク管理が求められる。資産運用のリスクを抑える方法として、最も効果的な原則は「分散投資」であることは良く知られている。ひとつの銘柄やひとつの通貨、ひとつの国家に資産を集中させてしまうことは、大きなリスクがあるのだ。

債券や株式、通貨といった基本的な運用商品に加えて、金や原油といったコモディティ商品、さらに不動産や絵画などの美術品にも積極的な分散を図る。こうした分散投資こそが、資産防衛に役立つことを富裕層はよく知っている。

普通の個人投資家も真似したい分散投資

そんな超富裕層の資産防衛法から一般の個人投資家は、何を学べばいいのだろうか。超富裕層ほどスケールを大きくできなくても、やはり分散投資という資産運用の基本を守ることだろう。

日本の個人投資家が、5割超の資金を現預金に預けていることはよく知られている。特定の金融機関、特定の金融商品、特定の資産に集中させないことが、超富裕層の資産管理法から学ぶことができる。

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