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リーダーズオンライン倶楽部第6回イベント 「上場のメリットとデメリットとは」

現行規定で最短で東証一部上場を果たした、飲食店支援プラットフォーム、シンクロ・フード、国内外で高級飲食店を多数展開するも、東証二部上場から非上場の選択肢をとった、ワンダーテーブル。両社の社長が考える会社のあり方・社長のあり方・上場のメリットとデメリットとは何だろうか。

リーダーズオンライン倶楽部第6回イベントのテーマは「飲食店.comを展開するシンクロ・フードとロウリーズを展開するワンダーテーブルの戦略とは~上場のメリットとデメリット~」。
株式会社シンクロ・フード代表取締役兼執行役員社長 藤代 真一氏と、株式会社ワンダーテーブル代表取締役社長 秋元 巳智雄氏をゲストに迎え、パネルディスカッションを行なった。両企業の戦略・展開、さらには上場のメリットとデメリットとは?
(コーディネーター・早川周作・SHGホールディングス株式会社 代表取締役、南青山リーダーズ株式会社 取締役
コーディネーター・仙石実・南青山グループ 代表、公認会計士・税理士 公認内部監査人/AIPE認定知的財産アナリスト)

飲食店支援と飲食店展開、その考え方の違い


(早川)シンクロ・フードの立ち上げから東証一部上場に至る経緯、事業展開について教えてください。

藤代 シンクロ・フードは、飲食店の経営者に利用いただくインターネットプラットフォーム「飲食店.com」を運営しており、現在15期目に当たります。

飲食店.comでは、飲食店を立ち上げる際に必要な物件情報、内装会社とのマッチング、飲食店を運営する際に必要な備品や厨房機器の購入サービスを提供しています。最近よく利用されているのが、求人サービスです。飲食店の経営に必要なすべてがワンストップで揃う、これが飲食店.comの強みです。

(早川)飲食店経営の入口から出口までサポートしてもらえるのが、シンクロ・フードの魅力ですね。続いて、ワンダーテーブルのこれまでの経緯・事業展開について教えてください。

秋元 シンクロ・フードが飲食店の支援企業であるのに対し、我々ワンダーテーブルは飲食店を実際に展開している企業です。現在国内で53店舗を展開し、年商が125億あります。

また、現在では海外進出にも注力しており、世界7カ国に65店舗を展開しています。

一般的に飲食店で年商125億をあげるには、200ほどの店舗数が必要です。けれども、我々はハイリスクハイリターンの覚悟で大きく投資し、大きな売上を出す前提で、規模の大きな店舗を展開しています。我々のようなやり方で事業展開に挑む飲食店は、そう多くありません。しかし、業界を20年見てきてわかったのですが、小さな店舗を数多く展開しても結局そのブランドのトレンドは長続きしません。これに対して我々は大きく投資をかけ、ハイリスクながらも、10年20年30年と永続するビジネスモデル育成を念頭に事業展開しています。

上場のメリットとデメリットとは

(早川)シンクロ・フードは、現行規定で最短で東証一部上場を果たされています。上場のメリットを、どのように捉えておられるのでしょうか。

藤代 東証一部の上場は2017年の9月ですが、その1年前の2016年9月に、まずマザーズに上場しています。2年ほど前、社内で中期経営計画を作る際、今後どのような方向に我々が進んでいくべきかを、経営層で話し合いました。ちょうどその頃、ある程度利益を出せる体質が固まっていたのです。中期的な経営課題は、我々の運営している飲食店.comというインターネットプラットフォームの価値を高め、より多くの方にご利用いただくことです。そのためには社会的信用を高める必要があり、その手段としては上場という仕組みを利用するのが一番わかりやすい。経営陣での意見が一致し、上場を決めました。マザーズに上場する段階で、東証一部上場を視野に入れていました。

(仙石)マザーズから東証一部へと市場変更する方が、いきなり東証一部へ参入するよりもクリアすべきハードルが下がりますね。

(早川)様々な社長を見てきましたが、上場できる規模であっても市場の様子を伺うケースも多く、すぐに上場と方針を固める経営者ばかりではありません。その点、藤代社長はできると判断すれば、直ちに行動するタイプなのですか。

藤代 そうですね。私はビジネスではスピードが大切だと思っています。上場を目指していながらも、途中でいろんな課題が出てきて、上場を中止せざるを得なくなることもあります。そのため、できる状況にあるなら可能な限り迅速に実行した方がよいと思っています。

(仙石)実際、リーマンショック後は一挙にIPO件数が減りました。できるときに一気呵成にことを進めるのは、経営者に必要な心構えですね。

藤代 我々が上場する際に何より注意したのが、正しく会社を評価してもらうことでした。最初に時価総額を決める際も、基本的にすべて証券会社にお任せしましたが、唯一注文をつけたのが、適正な価格をつけてもらうことでした。株価とは本来、上場後に市場が判断すべきものであり、最初から妙に高い評価を受けると後で苦しまなければならないし、逆に低い評価を受けても市場の中で埋もれてしまう恐れがあるからです。

(仙石)一方でワンダーテーブルは、東証二部に上場した後に、上場を取り下げられています。現在は非上場で様々な戦略展開をされていますが、思いきった決断を下した理由は何だったのでしょうか。

秋元 一番の理由は2008年のリーマンショックです。リーマンショックが起こった際に会社として大打撃を受け、会社を変えるきっかけが必要になりました。先にも述べたように、我々のビジネスモデルは、大きな投資を行い、時間をかけて大きく回収することです。このようなビジネスモデルは上場企業に向いていないのです。というのも、会社として求めるのは長期的な視点でのビジネス展開であるのに対し、株主は常に短期的なスパンでの利益を求めてきます。結果的に、2007年の上場時には全国で75店舗を展開していましたが、非上場化に伴い20店舗以上を閉店しました。けれども、売上高は店舗数を絞った現在の方が高いです。

(早川)上場していると株主の目は避けられません。どうしても短期利益優先になり、長期的な視野に基づく投資がなかなかできないように思います。

秋元 私は、ほとんどの飲食店が上場に向いていないと思っています。上場し、上手くPRを打つことで株価が上がるケースもありますが、上がった株価を維持していくのは難しいのではないでしょうか。だからといって、すべての飲食店が上場に不向きだと言っているわけでもないのです。国内市場で、500店から1000店規模で店舗展開できる企業は、長期的に見ても上場に向いていると思います。

(仙石)最近上場された藤代社長は、秋元社長のお話を聞かれていかがですか。

藤代 非常に深い話で私も、株主の目の厳しさを実感しています。株価が下がるとプレッシャーがかかり、少し業績が上向くとその次が求められる。そうした外部の声に惑わされることなく、自分のペースを保ち、企業価値を高めていくことは非常に大変だと思っています。

(早川)一般的には上場により、採用が良くなると思います。藤代社長は上場されて、採用が良くなった実感はありますか。

藤代 以前と比べると少しは良くなりましたが、上場したからと言って劇的に改善されるわけでもなかったです。

(早川)なるほど。逆に、東証二部から非上場化を果たされた秋元社長は、上場時と非上場化となった今で、採用面での変化はありますか。

秋元 我々が上場していた時と、現在では上場企業のあり方、上場企業に対するイメージが異なっているのではないでしょうか。我々が上場していた時は、上場企業=大手企業というイメージが世間的に強かったです。しかし、現在は様々な上場企業があります。また現在は、上場しているかどうかではなく、ビジネスモデルやトップの魅力が企業の価値になっていると思います。そのような背景の中で、我々は非上場化を行ってからは株主の目を気にすることなく、より自由に、自社のイメージにフィットしたPR展開に集中しています。その結果、弊社では上場時よりも、現在の方が採用は良くなりました。

上場、非上場を問わず企業における経営者の使命とは

(仙石)後継者の育成について、どのような手を打たれていますか。

藤代 今はとにかく、会社が駆け上がっていくことを第一に考えています。とはいえ、私がいつまでも社長であり続けるわけではないので、最近では、自分と会社の距離を開けて、会社を見るようにしています。基本的に私は、会社の理念や想いを理解しているスタッフに後を継がせたいと思っています。そのためには教育が大切なのですが、まだ十分に教育ができていない。これが喫緊の課題だと感じています。

秋元 我々は元々、ファミリー企業でした。上場していた際もほとんどの株を創業家が所有し、取締役や監査役などの要職全て創業家で押さえていました。しかし、非上場化に際して、所有と経営に一線を画しました。こと経営に関しては、社内の仕組み作りが重要だと考えています。そのために、社長のやるべきことを明文化しています。また社内の状況を把握するために、1年に2回社員全員との面談を行っています。個人の人格は、その人だけのものですが、会社にもそれぞれ法人としての人格があります。法人の人格を理解し、明文化された仕組みに則ることで、社長としての仕事をこなしていくことができると思っています。今後、誰が社長になっても永続的に会社が続いていくために、より良い仕組みを整えるのが私の役割です。

(早川)最後に、お2人が企業の代表として大切にしていることを教えてください。

藤代 我々の事業は多くの方にご利用いただくプラットフォームの運営です。プラットフォームは透明性のある公平な場であるべきです。そのため、私は常に誠実でいようと思っています。そのような場を作るため、運営会社の代表として誠実さを最も大切にしています。

秋元 社長の役割とは、会社にとっての新しい価値を作り続けていくことだと思っています。そのため重要な視点が2つあると思います。
1つは会社の法人としての人格を、社内・社外全ての人に浸透させることです。社長の個人的人格によって会社の人格までを変えてしまうのではなく、誰が社長をしても創業当時から続くような会社の人格を確立し、社内・社外全ての人に伝えていく。これが大切だと思っています。もう1つはビジネス視点の話として、社長が社員・業務の管理をしないことです。社員・業務の管理等、現場の指揮を行うのは部長や役員であるべきです。そのために社長が取り組むべきは、部長や役員の指導、人事制度の整備です。


リーダーズオンライン倶楽部

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