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リーダーズオンライン倶楽部第3回イベント「医師×上場企業経営者」医師にして上場企業経営者。二物を与えられた人物だから見える、医療と経営の理想

リーダーズオンライン倶楽部 第3回イベントのテーマは「医師×上場企業経営者」。医師でありながら上場企業の経営者でもあるメドピア株式会社の石見陽社長とテラ株式会社の矢﨑雄一郎社長をゲストに迎え、パネルディスカッションを行いました。医師であり経営者でもある2人だからこそ話せる、医療・経営への思いを語ってもらいました。
(コーディネーター・早川周作・SHGホールディングス株式会社 代表取締役、南青山リーダーズ株式会社 取締役)

医師が経営する上場企業、その強みは

(早川)会社の事業内容とビジョンについて教えてください。

石見 メドピア株式会社は、国内最大の医師専用コミュニティサイト「MedPeer」を運営しています。現在の会員数はざっと10万人で、国内の医師3人に1人が会員です。医師たちの情報交換や情報共有の場として医師同士を繋ぐことに加えて、製薬会社が医師に対して新薬などのプロモーションを行う場としても機能しています。

矢﨑 テラ株式会社は、免疫細胞を使ったがん治療の研究開発を主な事業としています。患者の血液から細胞を取り出し、がん細胞と戦う免疫細胞を作る。独自の免疫細胞作成技術は特許取得済みで、既に国内で11,000症例の実績があります。現在、膵臓がんをターゲットに日本初となる治験を申請しており、膵臓がん治療における保険収載を目指しています。

(早川)膵臓がんは発見が非常に難しく、見つかった時点では手遅れであることが多いそうですね。

矢﨑 その悲劇的な状況を何とか打開したいのです。膵臓は背中の近くにあり、早期発見が非常に困難です。がんが確認された時点で、かなり進行しているケースが多く、ほとんどの患者は診断のついた時点で余命6ヶ月程度となります。けれども弊社の治療法と従来の抗がん剤治療を併用すれば、余命を最大で1.5倍近くまで伸ばせる可能性が明らかになっています。今回治験に取り組むのは膵臓がんですが、弊社の免疫療法は、一部の血液がんを除き、どのタイプのがんに対しても同じ効果を期待できることが判明しています。

(早川)どのタイプのがんにも効果があるなら、免疫細胞療法は画期的ながん予防になりますね。

矢﨑 仰るとおりです。弊社の免疫細胞治療のメリットは、患者自身の細胞を使うため副作用がないことです。このメリットを活かして、がん予防に応用するプロジェクトを立ち上げています。実は我々の研究に最も強く関心を寄せてくれるのは、企業経営者の方々です。みなさんとても健康意識が高く、弊社の免疫療法を予防的に使いたいとの声が、多く寄せられています。

(早川)経営者は健康に関心の高い人が多いですね。実際、私の知り合いの経営者も健康な方ばかりです。

矢﨑 健康意識の高い経営者は、毎年欠かさず人間ドックを受けられます。そのような方々に対する人間ドックのメニューに組み込むことで、がん予防に利用してもらえるようにしたいのです。

(早川)国内ドクターの1/3を会員に抱えるコミュニティサイトを運営されている石見さんは、テラ株式会社の免疫療法が医師にどのように受け止められると思われますか?

石見 あくまで私見ですが、医師の多くは保守的であり、新しい試みに対して批判的に捉える人が多いようです。しかし、テラ株式会社の免疫治療が保険適用されるようになれば、免疫治療技術が国に認められたことを意味します。その波及効果は非常に大きいのではないでしょうか。

医療と経営の兼ね合い、クリニック運営の課題は何か

(早川)医師の事業承継についてどのようなお考えをお持ちですか?

石見 事業承継は最近始めたところなので、まだ詳しくお話できません。医師はそれぞれが様々な想いを持って医療に取り組んでいますが、だからといって、医師の子供が必ずしも医師になるわけではありません。医師が、いかに事業を続けていくのか。これは非常に難しい問題であり、患者を含むステークホルダー全員で考えていかねばならない大テーマだと思います。

矢﨑 私の父親は開業医でした。その子供は私を含めて全員が、医療や医療関連の事業経営に携わっています。にも関わらず、父親の開いた地方のクリニックは、結局誰も継ぎませんでした。経営面を考えた結果、全員が東京に出てきているためです。おそらく今後は、地方におけるクリニックの事業承継はかなり難しくなるのではないでしょうか。

(早川)事業承継を含め医療法人の経営は難しいですね。

石見 私はメドピアとは別に、訪問診療専門の医療法人も運営しています。M&Aを行って始めた医療法人ですが、医療関連でM&Aをする際には、何を買うのかを考えなければならない。基本的に医療法人は1人の医師と複数のスタッフによって構成されているわけですから、M&Aの実質的な目的は医師の買収になります。

矢﨑 私も個人的に医療機関の経営をしていますが、今後は医療と経営を切り離して考える必要があると思います。これから先、保険の点数システムも変わり、医療法人の経営はますます難しくなるでしょう。そこで株式会社が医療法人の経営を請け負うなど、経営管理のアウトソーシングに可能性を感じます。美容外科などでは、大きな組織を円滑に運営しているところが多く見受けます。そういうところはきっと、経営が上手なのだと思います。

(早川)私の知り合いで、美容外科の事務をされている方がいます。話を聞いていると、美容外科では事務・営業などの業務と、手術を担当する医師の役割分担をきっちり分けて経営されています。

医療法人の組織運営におけるクリティカルポイント

(早川)最近は一般企業が医療法人を買収するケースが増えています。これから医療法人買収を考える経営者にとって必要なことは何でしょうか?

石見 私は医師のコントロールが最も大切だと思います。スタッフはあくまでも医師のまわりで動く存在であり、医師の存在こそが核となるのです。医師を中心とした関係性の中では、医師がスタッフとうまくコミュニケーションを取り、孤立しない仕組みつくりと配慮が必要です。また、医師は金銭的なメリットだけではコントロールできない人も多いので、モチベーション面のマネジメントも非常に重要です。

矢﨑 私が重視しているのは良い医師を確保することです。良い医師とひと口に言っても様々なタイプがあります。誠実で力のある医師に出会うのが理想ですが、なかなかそうもいかない。となると、力を持ちながら個性的なタイプの医師をうまくマネジメントしていくことが、運営のカギとなる。医療法人の運営は医師のクオリティに大きく左右されます。裏を返せば力のある医師の確保とそのマネジメントがきちんとできれば、それだけで医療法人の運営は安定するはずです。

(早川)これから医療法人をつくるとして、参入しやすい分野はありますか。

石見 訪問診療・在宅医療の分野だと思います。現在、国の医療政策は、病院の数を減らし、高齢者は自宅で診療を受け、看取りまで行う流れとなっています。その中で訪問診療、在宅医療というのは、今後医療業界に参入する上で、ニーズの高いマーケットだと思います。

(早川)お2人は医師でありながら上場企業の経営者でもありますね。組織運営をリードする中で様々な経験をされてきたと思われますが、その中でも最も辛かった経験を教えてください。

石見 私は人間関係で非常に苦い経験をしました。2011年のことですが、経営者としての自分の思いをまわりの人間にうまく伝えられず、会社がバラバラになってしまいました。その結果25人いた社員が、一気に7人にまで減ってしまったのです。残ってくれた7名には、会社としてやりたいこと、実現したい夢が辛うじて伝わっていた。だから夢を信じて、残ってくれたのでしょう。当時は累積で2億円近くの赤字を抱えており、経営状態もぎりぎりのところに追い込まれていました。そんな中で、半数以上の従業員に会社を去られ、とても苦しく辛い思いをしました。

矢﨑 私も同じような経験をしました。弊社は元々診療をビジネスとしていましたが、上場後は治験を主なビジネスとするよう大きく方向転換したのです。それに伴い会社の構造改革を行い、人員削減や業務を縮小せざるを得ない事業もありました。結果的に会社に残ってもらいたい人が辞めていき、非常に辛い思いをしました。

(早川)残ってもらいたい人材が辞めていった。その理由は何でしょうか。

石見 私は会社の規模により、必要な人材は全く異なるのだと思います。会社が成長するにつれ、会社とペースの合わなくなる人が出てくるのはやむを得ないのではないでしょうか。

矢﨑 弊社の場合は、人間関係が原因だと思います。経営方針の転換に伴い縮小せざるを得ない事業、それによって切られる社員が少なからず存在したのは事実です。切られた社員が関わる人間関係も絡んで、会社の空気が悪化しました。こうした影響を受けて、残ってもらいたい人の中にも辞めていった人がいます。

(早川)最後に、厳しい状況を克服して上場されたお二人に、医師として、また上場企業の経営者として、今後上場を目指す経営者に向けたメッセージをお願いします。

矢﨑 上場に対する考え方は人それぞれだと思います。上場すると株主総会があり、四半期ごとの決算がルール付けられているなど、未上場の会社に比べて自由度では劣るかもしれません。しかし、私自身は上場したことで視野が広がり、未上場のままでは得難い経験もさせていただきました。特に弊社のような研究開発型の企業では、資金調達が極めて重要な経営マターとなりますが、その面でも上場で得られるメリットは大きいと思います。

石見 私は常にパブリックな意識を持って会社経営に携わりたいので、上場により株主総会など常に外部の目に晒される状態を作るのは、非常に良いことだと思っています。

リーダーズオンライン倶楽部

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