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【ミャンマー】クーデター後で犠牲者最多[社会](2021/03/01)

軍事クーデターで全権を掌握したミャンマー国軍は2月28日までに、軍政に抗議するデモ隊への弾圧を全土で強めた。治安部隊が、銃撃や催涙ガスの噴射を各地で強行。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、同日だけで全国で少なくとも18人が亡くなり、クーデター発生後で最多となった。日本人の在留者が多い最大都市ヤンゴンでも初めて犠牲者が出た。抵抗を続ける市民への武力行使が続けば、政情はさらに不安定化しそうだ。

デモの参加者を拘束する治安部隊=2月28日、ヤンゴン(NNA)

デモの参加者を拘束する治安部隊=2月28日、ヤンゴン(NNA)

地元メディアによると、ヤンゴンでは、胸部に銃弾を受けた男性1人と、治安部隊が制圧に利用した武器で心臓に衝撃を受けた女性1人を含む少なくとも4人が亡くなったことが明らかになっている。ヤンゴン以外では、南部タニンダーリ管区ダウェーで4人の死亡が確認されているほか、第2の都市マンダレー、中部バゴー管区などでも犠牲者が出た。

OHCHRは死亡者のほかに30人程度の負傷者がいるとしており、さらに死者が増える恐れがある。一方、国軍当局は28日夜、国営テレビを通じ、避けられない武力行使で亡くなった人は8人だと報じた。

OHCHRの調査に基づけば、クーデターが起きた1日以降、デモに絡む治安部隊の武力行使が直接の原因となり亡くなった民間人は20人を超えることになる。このほか、夜間の自警団活動中に銃撃された男性など3人が死亡している。

■ヤンゴン、26日から状況急変

外国人の在留者が多く国際社会からの視線が注がれやすいヤンゴンではこれまで、強硬な武力行使はなかったが、26日に急変した。

若者らによる大規模デモの会場となっていた、カマユ郡区レーダン、サンチャウン郡区ミニゴンに200人を超える治安部隊が配置。両地域を中心に、威嚇発砲を含むデモ隊への武力行使が頻繁にみられるようになった。

国軍は刑法に基づき、「不法な集会」であるデモの参加者を取り締まる方針を示しており、拘束者は増えている。ヤンキン郡区でデモ行進していた医療従事者の団体は28日、大学生を含む約80人が拘束されたと明らかにした。

ただ、民主派の市民が屈する気配はない。ダウンタウン地区では、タイ、香港、台湾らの若者が民主化実現で連帯する「ミルクティー同盟(#MilkTeaAlliance)」に参画した団体が行進。インセイン郡区では数千人が路上を占拠、一斉に傘を開き抗議の意思を表した。

デモに参加した会社員女性、スー・ラインさん(24)は「多くの友人が拘束され、安心できる場はどこにもない。それでもクーデターを終わらせるため、全ての手段を講じて抵抗する」と話す。日本を含む国際社会に、非暴力の市民に恐怖を与える国軍に対して強い措置をとってほしいと求めた。

ミン・アウン・フライン総司令官は、デモ行為や、公務員などが業務を放棄して抗議の意思を表す市民不服従運動(CDM)を厳しく取り締まる方針を再三にわたり強調。今後も、全国でデモ隊との衝突が懸念される。

国営テレビによると、28日にデモなどの行為で治安部隊に拘束された人の数は全国で571人、そのうちヤンゴンが322人だった。

ミャンマーに詳しい外交関係者は「過去の軍事政権は、治安が悪くなる要素を意図的につくり、取り締まりを求める声を大義名分にしてきた。今回も同じ手法をとる恐れがある」と指摘する。治安部隊の弾圧が激しい地域の住民によると、警察官はデモ隊を直接弾圧するだけでなく、一般市民から飲料水や食品を強奪するなどの暴力行為にも及んでいるもようだ。

治安部隊が重点的に配置された地域に事務所がある日本企業の多くは、3月1日以降も出勤を停止し、自宅作業などの措置をとるとみられる。CDMによる行政機能の停滞は続くとみられ、事業環境が正常化する見通しは現時点で立っていない。

強制排除を行おうとする治安部隊に対し、消火器を噴射するデモ隊=2月28日、ヤンゴン(NNA)

強制排除を行おうとする治安部隊に対し、消火器を噴射するデモ隊=2月28日、ヤンゴン(NNA)

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